2015-01-01から1年間の記事一覧

House of Cards

始まり方はそこそこだったのだが、3章(地元選挙区の少女の交通事故死の処理)でフランシス本人が敏腕であるところを見せて視聴者の心をつかみ、6章(教員ストの解決)ではその妻も夫顔負けのやり手であることを示し、さすがに飽きさせない。 8章がまたエモ…

悪魔の羽根

ミネット・ウォルターズ、創元推理文庫。「信じられない語り手」で持っていくところはなるほどと思ったけれども、個人的には昨年の養鶏所の殺人のほうがコンパクトでおもしろかった。

BLOOD ARM

大倉祟裕、角川書店。ほんの2時間ほどで読了。最高記録かもしれない。こういうきわめて映像的な本を読むたびに、「文字」でこれを表現することの意味を考えてしまう。内容はおもしろいんですけどね。海外小説にもこの読書体験を期待されるときつい。たとえ…

今日から地球人

マット・ヘイグ、ハヤカワ文庫。いい話。ジョークも冴えてます。

メンタリスト シーズン5

まあ、いつもどおりの展開。安定して愉しめるということでもあるのですが。

アルゲリッチ 私こそ、音楽!

音楽は聴くものであって、説明するものじゃないでしょ、とアルゲリッチは言う。それは彼女の人生全般に言えることではないか。アルゼンチンを離れた理由、母との確執、三人三様の娘たちとの関係。何を説明しようとしても途中で表現することばがなくなる。想…

街への鍵

ルース・レンデル、早川書房。さすが全体的にすばらしい。静かななかにも張りつめるサスペンス。骨髄移植のドナーになった主人公メアリをめぐる物語はよくできている(とくに乱暴者の元恋人からの贈り物以降)。一時的な浮浪者ローマンと、犬の散歩者ビーン…

第219回柳家小三治一門会@府中の森芸術劇場ふるさとホール

柳家一琴「牛ほめ」、柳家禽太夫「蛙茶番」、柳家〆治「池田大助」、柳家はん治「皆で老いてる唐獅子牡丹」、柳家小三治「粗忽長屋」。〆治がいろいろ演じ分けてうまいところを見せた。はん治の現代物も愉しい。小三治クラスになると、観客の心の準備ができ…

シブミ

トレヴェニアン、ハヤカワ文庫。岸川将軍と新潟県加治川の桜を見にいく件はあまりにも美しく切ない。日本文化やアメリカ文化に対する批評もまったく古びていない。なぜあえてニコライ・ヘルの暗殺者としての絶頂期を描かなかったのかに興味がある(それがの…

偽りの楽園

トム・ロブ・スミス、新潮文庫。リーダビリティはすごい。作家としてうまい。だけど読み終わって考えてみると、レオ三部作にはやはり届かないかな。母親の語りが3分の2くらいを占めるといういびつな作りは、あえてそうしたのかもしれないが。ルヘインの『…

スクープ

イーヴリン・ウォー、白水社。全体にわたっていまひとつ作家の意図が汲み取れず、残念ながらあまり愉しめなかった。人ちがいでアフリカに送られたライターがスクープをものにするという大枠はいいとして、細かいギャグと思われるものがはたしてギャグなのか…

E・M・フォースターの姿勢、他

E・M・フォースターの姿勢(小野寺健)みすず書房 示唆多く、要再読。E・M・フォースター(ライオネル・トリリング)みすず書房 フォースターの小説はもっと読まれて当然なのに、そうならない原因は彼の作風にあり、そしてその作風とは、喜劇的作風である。…

ジョヴァンニの部屋

ジェームズ・ボールドウィン、白水ブックス。アーヴィング『ひとりの体で』でも言及されるゲイ小説の古典。前半はどうかなと思ったけれど、主人公がジョヴァンニと別れるところからの書きっぷりは見事。1956年の作品ながら、今日でも充分通用する。ただいか…

マーラー交響曲第9番

バーンスタイン、ベルリン・フィル。大昔、バーンスタイン+アムステルダム・コンセルトヘボウでこの曲にノックアウトされた身としては、聴いておくしかない。が……気持ちばかりがはやって、ベルリン・フィルでさえ音が追いついていない印象。改めてコンセル…

E・M・フォースター研究

阿部幸子、ニューカレントインターナショナル。 文明世界で見失われてゆく人間性の回復――E・M・フォースター(1879-1970)の作品のテーマはここに始まり、ここに終る。物質文明の支配に歯止めの必要を痛感した多くの作家達の先頭に、フォースターはD・H・ロ…

トルコ捨駒スパイ事件

ボリス・アクーニン、岩波書店。悪くはないのだけれど、テーマが露土戦争で、舞台がほとんど戦地というのはちょっと。

白の迷路

ジェイムズ・トンプソン、集英社文庫。警官なのに犯罪者集団。麻薬ビジネス壊滅のために、上司の命令で部下と法の境界を越えることになったのだ。麻薬組織から奪った金を分け合う様子はまるで強盗団か海賊のそれ。しかも主人公のカリは脳腫瘍の手術で感情を…

堕天使(アザゼル)殺人事件

ボリス・アクーニン、岩波書店。ドストエフスキーと同時代のモスクワ(レニングラードではないけれど)が舞台というだけで盛り上がるのだが、それがなくともなかなか軽快なテンポでたたみかける愉しい一冊。

ハンニバル

トマス・ハリス、新潮文庫。これでレクター・サーガの復習もひとまずおしまい。『ハンニバル』自体は、レクターのあまりの大きさに作者が引きずられてこうなったのかという感じ。読者にとってレクターより悪辣で憎たらしいヴァージャー(小児性愛者)を生み…

火葬人

ラジスラフ・フクス、松嶺社。この得体の知れない主人公。不気味なのに、惹きつけられる。ナチスに洗脳される葛藤すら表に出さず、当たりまえのように家族を殺す男。「……法律は、人びとを助けるためにある……」のことばの虚しさ。しかし最後はどういうことな…

それはどっちだったか

マーク・トウェイン、彩流社。オペラ・ブッファ的な軽い犯罪小説かと思いきや、最後の主従逆転に度肝を抜かれた。こんなにブラックな作家だったのかトウェイン、畏るべし。解説が非常に丁寧で、いちいち腑に落ちたけれども、本文からはとてもここまでは読み…

週刊ポストとFRIDAY

本日発売の週刊ポスト、新聞広告によると、メインの記事は東芝の「骨肉の人事抗争」で、次が「中国バブル大崩壊」。どこを見ても、今週最大の話題だったはずの安保法制の「あ」の字もない。同じくFRIDAYは、メインが新国立競技場で、次が大越健介氏の新潟県…

歩道橋の魔術師

呉明益、白水社。台北にかつてあった「中華商場」というショッピングモールと、そこに暮らす人々を描いた短篇集。棟と棟を結ぶ歩道橋にいた魔術師が各篇のライトモチーフなのだが、正直なところ、魔術師に毎回こだわる必然性が感じられなかった。『カステラ…

羊たちの沈黙

トマス・ハリス、新潮文庫。言わずと知れた、20世紀を代表するサイコものの金字塔。レクターというキャラクターを生み出した発想の勝利。ただ、高見さんが指摘しておられるとおり、犯人そのものの造型はやや凡庸か。ミステリーとしては、関連のなさそうな死…

ハンニバル・ライジング

トマス・ハリス、新潮文庫。なんだか壮大で華麗な無駄という気がする。バイクで夜の街を疾走する若き日のレクター、というのは斬新な画かもしれないが、彼が「カンニバル」になった経緯もわかったようでわからないし(妹の件だけでこれほどのメタモルフォー…

紙の動物園

ケン・リュウ、早川書房。表題作はすばらしい。作家の素質もすばらしいと思うけれども、結局自分は地球号とかメカ狐的なものにどう反応していいかわからないのだと思う。慣れていないのか、いわゆるSFに向いていないのか。

強襲

フェリックス・フランシス、イースト・プレス。息子が堂々とあとを引き継いだ競馬シリーズ。訳も随所で菊池さんを髣髴とさせ、すばらしい。最後の馬に乗る場面では思わず熱くなる。トムリンスン主任警部や調教師のジャンなど、もうちょっと主人公との関係を…

ハワーズ・エンド

E・M・フォースター、河出書房新社。裕福な家族同士のつき合いと、そこに起きる事件の数々を淡々と描写、という感じかと思いきや、意外にストーリーは起伏に富んでいる。え、この人がというような人も死んだりして。しかし、なんといっても、ハワーズ・エ…

ハンニバル

「レッド・ドラゴン」前夜のレクター博士とグレアムをフィーチャーしたTVドラマシリーズ。そもそもFBIの一部門の管轄下でこれほど頻繁に、これほど凄惨な猟奇殺人が起きるわけがないから、リアリティは度外視するにしろ、ちょっと話がわかりにくいか。それを…

郵便配達は二度ベルを鳴らす

ジェームズ・M・ケイン、新潮社。まさにパルプ・ノワールのお手本のような名作。入るべき要素はすべて入っている感じ。忘れてましたが、トリック(殺人そのものではなく裁判上の)は意外に凝ったもの。