2014-01-01から1年間の記事一覧
ロバート・クレイス、創元推理文庫。途中まで、犬を使うのはずるいな、事件が主人公がらみの銃撃戦だけで小さいなと思っていたけれど、最後の捕り物の迫力はさすが。マギーに泣かされる。北上さんの犬解説も◎。
ケイト・モートン、東京創元社。なるほどこれもよくできている。いつものモートンといえばそれまでだけれど、きれいに落ちもついていて。この人の本を読んでいると、不思議と自分も何か小説を書きたくなる。
ゲヴァントハウス・カルテット。「25年目の弦楽四重奏」を見て急に聞きたくなり購入。これはすばらしくお買い得な全集だった。HMVさんありがとう。音質がずば抜けているし、演奏も見事。本当に隣で弾いているかのよう。 初期の曲は初めて聴いたが、どれも味…
イアン・ランキン、新潮文庫。本来の職務である警察内の調査をあまりせず、私立探偵のように足を使った捜査に乗り出すフォックス。よく考えたら、停職中だからですね。疑った相手が相棒になるパターンはどこか懐かしい。
ケンペ、ミュンヘン・フィル。たいへん生き生きした演奏。想像をはるかに超えた。まろやかな生の音が伝わってくる感じでした。同録のメタモルフォーゼンに関しては、やはりカラヤンのほうが美しいかな。オケのカラーもあるでしょう。
ジョエル・ディケール、東京創元社。よくできている。
クライバー盤のほうが全体に温度が高い(熱い)けれど、カラヤン盤はしなやかで美しく、シュヴァルツコップの元帥夫人はやはりすばらしい。第1幕のモノローグはもちろん、最後の三重唱にも聞き惚れた。でも私的にはゾフィーはどうしてもルチア・ポップです。
ミネット・ウォルターズ、創元推理文庫。火口箱もよくできているが、個人的には養鶏場のほうが好み。クリスティーの『春にして君を離れ』を想起させる、主人公を突き放すような「作者の悪意」を感じます。最後の作者コメントも含蓄があってよろしいかと。
カラヤン、ベルリンフィル。カラヤンの流れでブルックナーも聞いてみた。よい。第4番の第1楽章で高音のバイオリンが上から降ってくる感じとか、新鮮。第9番は大好きな曲だが、始まってほんの1分ほどでブルックナーの巡航高度までぐーっと持っていかなけ…
モーツァルトは総じてテンポが速めで、しかし緩徐楽章(とくにメヌエット)は遅め。意外によかったのが第40番。第1楽章などオケがよく鳴っている。当たりまえか。第41番はモーツァルトの交響曲のなかでいちばん好きなのだが(まあその日の気分にもよるけれ…
とりあえずホフマン祭りの最後。脚本もよくできているし、役者もみなうまいが、エピソードの積み重ねなど作りすぎという感じも。まさにうまいが感情を解放していないという設定の第1バイオリンのように。ラストもこれでいいのかという……。しかし佳作である…
ブライアン・エヴンソン、新潮社。最初はついていけなかったが、「追われて」で歯車がカチッと合った。「さまよう」や表題作の「遁走状態」や「裁定者」など見事。「私/他人、生/死、の境界線はむろん、現実/妄想、現在/過去、第一の他人/第二の他人等…
大学の奨学金の奪い合いとか、南北戦争ギャグとか、あまり読んだことのないタイプの話が読めて幸せ。まさにあの手この手の作家です。
まったく見事に中身のない映画。ただたんにアクションが連続して、トム・クルーズを愛でるというそれだけ。上海が出てくる必然性もまったくなく(あえて言えば今回のアクションに好適なビルの並び方?)、中国マネーが呼び寄せたのかと思ってしまう。ホフマ…
ロジャー・ホッブズ、文藝春秋。世評どおり非常にスタイリッシュでクール。まったく贅肉がない犯罪小説。まずは文句なし。でも、贅肉がないならないで、多少欲しくなってしまうのが天の邪鬼な自分ですが。
思いがけず時間ができたのでサントリーホールへ。「バラの騎士」の「ワルツ第1番」は、途中管が鳴りきっていない気がしたし、テンポももっと柔軟なのが好みだが、次のシェーンベルクの「浄められた夜」は見事な美しさだった。実演で聴いたのは初めて。後半の…
半年ぶりに。錆びたシャッターが並ぶがらんとした商店街を、宅配便の車だけが行き交っている光景は、ほとんどSFのディストピア。数少ない新しい建物はみんなデイサービス。無人駅の切符販売機のパネルにはショウジョウバッタがとまっている。親や親戚のお…
富豪の秘書役のホフマンも好演だが、第一にコーエン兄弟、第二にジェフ・ブリッジズとジョン・グッドマンの映画ですね。グッドマンが飼っている犬はノーフォーク・テリア?
NHKで見た。大分県保戸島に、亡くなった島民の初盆に誰かがその遺影を背負って踊るという風習がある。喪主が背負うのではなく、亡くなった本人がいちばん望んだであろう人が背負うというのが味噌。夫の遺影を娘ふたりの婿たちに託す夫人、早くから別の地域の…
ジョン・アーヴィング、新潮社。本当に久々のアーヴィングだったが、たいへん面白かった。バイセクシャルにもいろいろあるわけですね、相手がトランスセクシャルまではOKとか、性転換者までいくと自信に満ちあふれすぎていて駄目だとか。 セクシャリティをめ…
A・S・ウィンター、新潮文庫。三つのパスティーシュの書き分けは見事だが、ひとつの物語として見たときに、この方式をとる必要があったのか。中篇をひとつずつ愉しみ、気づくと連作だった、ぐらいの位置づけ? しかし、いちばん面白かったのは形式的にはい…
なんだかわけのわからない映画だが、いちばん早く死にそうだった主人公(ホフマン)がいちばん最後まで生き残った。あとで改めて考えてみたいが、考えるころには忘れていそう。でも、忘れてもいいんだよ、見ているこの時間が穏やかなら、と言われているよう…
ストリープとホフマンはどちらも見事な演技だが、映画としてはどうなのか。え、これで終わり? という感じ。何も答えが示されない。どんなことにも伏線+回収を求めてしまうのはよくないのでしょうが・・
死期が近い富豪、そのヤク中の後妻、まじめな介護人(ホフマン)、セックス伝道者になった富豪の息子。癌に冒されたテレビ司会者、彼のヤク中の娘、彼女に惚れたまじめな警察官。かつてクイズ天才少年だったゲイの男。いまのクイズ少年。路上のラッパー黒人…
なかなかの良作。『太陽がいっぱい』よりハイスミスの原作に近いのかな。他人になりすましていることがいつばれるのか、どう切り抜けるのか、というのは鉄板のスリル。マット・デイモンはこういう役が似合いますね。ただ、ゲイを表に出しすぎという感じも。…
昨晩のNHK「プロフェッショナル」より、映画美術監督、種田陽平さんのことば: 常軌を逸したエネルギーを注ぎ込まなければ、人には伝わらない。
とても70年代の録音とは思えない音のよさ。どれもすばらしい演奏だが、とくに交響曲第5番の迫力に驚き感動する。
思えばアバドもちゃんと聞いたことがなかった。ゼルキンとのモーツァルトのピアノ協奏曲は愛聴していたけれど。 アバドはあくまで誠実に、丁寧に音楽を作っていく。多くのオケがたんに音を伸ばすところで、繊細な強弱をつける。そういう意味で、モーツァルト…
思いきった邦題をつけましたね。フィリップ・シーモア・ホフマン祭りの続き。シドニー・ルメットの遺作。トンプスン的、パルプノワール的に最初から最後までまったく救いのない話。それでも役者の演技とルメットの言う「メロドラマ」(プロットが先にあり、…
すごいものを見たという思いしかない。フィリップ・シーモア・ホフマンがカポーティ本人のように小柄に見えるのはどういうマジックだろう。登場後一瞬でゲイとわかるのも。最後の主演作になった『誰よりも狙われた男』の試写を見てからというもの、ホフマン…