2014-01-01から1年間の記事一覧

これ誘拐だよね?

カール・ハイアセン、文春文庫。スキンクも歳をとった。ケモにもまた会えるとは。ただ、久しぶりのハイアセンで期待が大きすぎたのかもしれないけれど、ギャグがちょっと多すぎる気がしないでもない(自分が歳をとったせいか)。訳語もいまのことばに合わせ…

Karajan: Berlioz - Franck - Debussy - Ravel - Tchaikovsky - Dvorak - Bartok

またしてもカラヤンが万能選手であることを証明するセット。個人的に最大の収穫はバルトークの「管弦楽のための協奏曲」。こんなにいい曲だったのですね。チャイコフスキーの4番から6番もベルリンフィルの底力を見せつける演奏。それにしてもこのワーナーの…

ホーム

トニ・モリスン、早川書房。まるでデニス・ルヘインの短篇を読んでいるかのよう。彼女の影響をけっこう受けているのだと思う。

Karajan: Brahms-Bruckner-Wagner-R. Strauss-Schmidt

CD1ブルックナー4番は清新だがやや走りすぎ、CD2ヨハン・シュトラウスはさすがの安定感と高雅さ、シュミットは曲自体初めて聞いたがなかなか、CD3ブルックナー7番はかなりよしと来て、圧巻はCD4、ブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」や「悲劇的序曲…

凍氷

ジェイムズ・トンプソン、集英社文庫。翻訳ミステリー大賞のサイトでヘレンハルメさんの記事を読んでから、北欧のなかでもずいぶん毛色のちがうフィンランドに興味がある。田舎者、酒飲み、マッチョ文化、でもドイツとソ連のはざまで、日本人には想像もつか…

鋭い洞察

本日の朝日新聞朝刊、イラストレーターの山藤章二さんの寄稿「奥深きこころの世界」(漱石の『こころ』について論じたもの)になるほどと膝を打ったので、いけないのかもしれないけれど、ここに一部コピーしておく。 「エンターテインメントの要諦(つぼ)は…

興奮

ディック・フランシス、ハヤカワ文庫。何十年ぶりかで再読。 第1章が主人公ロークの生活、性格、鬱積を過不足なく説明していて完璧だとか、オクトーバーの裏にいるベケット大佐がじつはかっこいいとか、その他小ネタはいろいろあったけれど、菊池訳について…

不思議

今日発売の週刊文春と週刊新潮の最大の見出しが集団的自衛権の閣議決定でないことに本当に驚いた。どういう見解をとるかは別にして、今週最大の話題ですらないの? どちらも隣国叩き(慰安婦問題)のほうが重要という判断なのだろうか。まあ、実物を読んでい…

真夜中の相棒

テリー・ホワイト、文春文庫。あえてホモセクシャルのほうに持っていかなくてもよかった気もするが、それを言ったらおしまいですか。この手の小説の予定調和的プロットをたどるのかと思いきや、意外な結末だった。元警官のサイモンも、マックやジョニーと同…

世界堂書店

米澤穂信編、文春文庫。じつに多彩なすばらしいアンソロジー。巻頭『源氏の君の最後の恋』の多田智満子の日本語にうっとりし、『シャングリラ』の最後の場面にぶっとび、『東洋趣味』のこだわりに驚き、『私はあなたと暮らしているけれど、あなたはそれを知…

赤い橋の殺人

バルバラ、光文社古典新訳文庫。なるほど『罪と罰』を思わせる内容。最初はとっつきにくいけれど、子供の顔が死者に似ているあたりから佳境に入り、犯人の告白でたっぷり読ませる。推理小説の嚆矢としても貴重なのか。

The Mentalist The Fourth Season

第1話の結論はありえないだろうと思う。正当防衛の要件も満たさないのではないか。などと余計なことを考えたせいで、前途に少し不安を感じたが、レベルの高さは保っていた。個別のエピソードでよくできていたのは、第21話のゲイ・キャバレーの回(アガサ・ク…

コラプティオ

真山仁、文春文庫。ここまで正確に未来を予言すると、それだけでエンターテインメントになるのですね。いまの政治と重なる部分があまりにも多い。アフリカの「赤い」砂と苛烈な環境も強く印象に残った。

ダークナイト ライジング

ラストで二都物語の最終章が使われているということで見た。その部分だけでなく、脚本を作るにあたって二都物語から大いにインスピレーションを得たという。たしかにラストは味わい深く、アクションシーンのCGもすばらしいが、前半は意味がさっぱりわからず…

ウィーン室内合奏団

東京オペラシティにて。 シューベルト 弦楽四重奏曲第12番「四重奏断章」 ブラームス クラリネット五重奏曲ロ短調 シューベルト 八重奏曲ヘ長調 いずれも名曲、充実した演奏で大満足。ただ、アンコールのポルカ・フランセーズとトリッチ・トラッチ・ポルカが…

リッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲバントハウス管弦楽団

東京オペラシティにて。 メンデルスゾーン 序曲「ルイ・ブラス」 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 「皇帝」(ピアノ: ネルソン・フレイレ) ショスタコーヴィチ 交響曲第5番ニ短調 ものすごく反応のいいオケによるすばらしい演奏(マーラー7番に…

そして、星の輝く夜がくる

真山仁、講談社。すぐれたノンフィクションを読んだような読後感。主人公の大阪弁がうまいバッファーになっている。まず伝えたいことがあり、それを小説で伝えるという方法論がしっかりしていて、そこは題材が大震災になっても、これまでの作者と変わらない…

The Mentalist The Third Season

競馬を扱った第5話もいい(このトリックはディック・フランシスの作品にもなかったはず)けれど、第15話で上司のハイタワーを活躍させてからの展開が、やや強引ではあるが見事。個別の事件がマンネリ化しそうになると、レッド・ジョンの物語を出してきて引き…

砂男/クレスペル顧問官

ホフマン、光文社古典新訳文庫。オペラ『ホフマン物語』のもととなった三つの短篇。

もっと厭な物語

私的にいちばんは「皮を剥ぐ」かな。作家には、こういう厭なことに正面から取り組みたいと思うときがあるのでしょう。第3弾にも期待したい。

写真で見るヴィクトリア朝ロンドンの都市と生活

ワーナー+ウィリアムズ、原書房。ロンドン博物館の希少写真数百点。じつに愉しくてためになる。ディケンズ・ファンは必携と言えましょう。

われらが背きし者

ジョン・ル・カレ、岩波書店。出だしはなかなかいいし、ローラン・ギャロスにフェデラーが登場するなど、面白いところもあるのだが、評価にちょっと困るような・・。前作『誰よりも狙われた男』のほうが引き締まっている印象かな。テクニカルな面でも、諜報…

ゴーン・ガール(上・下)

ギリアン・フリン、小学館。嫌な人ばかり出てきて救いがないが、 ラクロス用のスカートとヘアバンドといういでたちのエイミーは、いつも秋色の背景のなかに写っていて、まるでその学校が町のなかではなく、ある月のなかに存在しているように見えた。 という…

緑衣の女

アーナルデュル・インドリダソン、東京創元社。 「殺人はどんなに時間が経っても殺人だ」エーレンデュルが言った。「どんなに昔のことでも、殺人ならわれわれはなにが起きたのか、被害者はだれなのか、殺された理由はなんなのか、加害者はだれなのか、調べな…

査問

ディック・フランシス、ハヤカワ文庫。フランシスについては、もはや読んだのか読んでいないのかも定かではない。先日、『骨折』のレベル(+菊池訳の純度)の高さに驚いたが、こちらもシンプルでぐいぐい読ませる展開。犯人の造型がちょっと……と思わなくも…

Tinker, Tailor, Soldier, Spy / Smiley's People

BBC制作、アレック・ギネス主演のテレビドラマ。全体的にまことに地味だけれども(『ティンカー、テイラー』など『裏切りのサーカス』と同じ原作とは思えない)、味わい深い。台詞なども原作を比較的忠実になぞっている。トビー・エスタヘイスは、エスタハー…