殺人者のパラドックス

イ・チャンヒ監督、ソン・ソック、チェ・ウシク。カオス編集がおもしろいと言えばおもしろいのだが、プロットが強引だし、ソン・ソックも生かしきれていないように思った。漫画が原作なんですね。

動く指

原作のおもな作りは、村じゅうの人に届く中傷の手紙をめぐるコメディらしいが、ドラマのほうにコメディ要素はほとんどない。あまり印象に残らないドラマだったが、原作の評価は意外に高いようです。

親指のうずき

もとはトミー&タペンスものなんですね。犯人がなんだか不気味である。

ラストコールの殺人鬼

イーロン・グリーン、亜紀書房。犯人は名探偵・名警官の推理によってではなく、死体のビニール袋についていた指紋から突き止められるというのがリアルな世界。被害者の人生がかなりくわしく語られている。犯人が出入りしていたピアノバーに著者もかようよう…

文春落語二人会

喬太郎師匠、おもしろい(初音の鼓、白日の告白)。正蔵師匠の蜆売りは先日の志の輔師匠と内容もサゲもちがう。志の輔版は旦那が鼠小僧で、そっちのほうが味があったかしら。

スリーピング・マーダー

新居に引っ越したら、階段の下で女性が死んでいる幻視が……という設定が魅力的。ドラマ的にもよくできているんじゃないでしょうか。

ベルファスト

ケネス・ブラナー監督、ジュード・ヒル、ジュディ・デンチ。紛争がそこここで起きている1969年のベルファスト、プロテスタント地区に住む家族の物語。子供たちが「カトリックの人って、毎週教会に行かなくても、ときどき懺悔するだけですべて赦されるからい…

アリス連続殺人

ギジェルモ・マルティネス、扶桑社。おもしろいんです。とくに終盤の犯人捜しはなかなかですが、前半の蘊蓄はなんとかならないものかと。ルイス・キャロルは日本でも有名とはいえ、ダ・ヴィンチぐらい知名度がないと蘊蓄ものはしんどいかもしれない。あと、…

地下道の鳩 ジョン・ル・カレ回想録

エロール・モリス、デイヴィッド・コーンウェル。ル・カレが亡くなったのは2020年末。この映画ではずいぶん元気そうだが、いつ撮ったのだろう。回想録や伝記に書かれていなかった新たな事実はほとんどないが、画像的にも美しく、良質なドキュメンタリー。

京城クリーチャー

パク・ソジュン、ハン・ソヒ。モンスターが日本軍の人体実験から生まれたという設定は別にかまわないのですが、主人公が探せと脅された日本人女性と、韓国人父娘が探している母親が同じ病院に囚われていて、そこで人体実験がおこなわれ、モンスターがじつは…

予告殺人

家族の事情やその他の情報が多すぎて、なぜわざわざ予告したのかというところの印象が薄くなっていないだろうか。

愛に奉仕せよ

チャン・チョルス監督。ヨン・ウジン、ジアン。チャタレー夫人+愛の子リーダ的な。しかし意外な結末でした。閻連科の小説『人民に奉仕する』が原作だそうで、舞台を中国から北朝鮮に移したわけですね。

トゥ・ザ・サミット 絶壁のレース

スイスの登山家ウーリー・ステックとダニ・アーノルドの闘いを追ったドキュメンタリー。マッターホルン、アイガー、グランド・ジョラスの3大北壁をロープも使わず数時間で登る。PC画面で見ても身がすくむほどの壁。

パディントン発4時50分

書斎の死体も牧師館もそうだったが、このマープルは警察に煙たがられても平気そうだったり、あいかわらず気丈。犯人捜しは、家族の遺産争いと見せかけて……というのが定番の裏をかいたかたちでしょうか。

牧師館の殺人

小さな村で起きる殺人事件。時計のトリックと『ナイルに死す』を思わせる犯人像。ミス・マープル初登場。

8つの完璧な殺人

ピーター・スワンソン、東京創元社。たしかにおもしろいが、ほとんど登場と同時に犯人がわかってしまった。また、冒頭のネタバレ警告で、「私」がブログで取り上げた8つの作品以外にアクロイドが入っていることからも、その後の展開が読めてしまう。これを…

おいしいごはんが食べられますように

高瀬隼子、講談社。ふつうにおもしろいけれど、芥川賞というのが驚きです。芦川さんのような人、どんな組織にもいると思う。

書斎の死体

マクイーワン版のマープルはなんだか活動的&強気。犯人が原作とちがうのは、原作をすでに読んでいる人向けのサービスかもしれないけれど、わざわざ⚪︎⚪︎愛を持ち出す必要があったのか。アリバイづくりのためのすり替えや、遺体が計画外のところへ移動という…

どれほど似ているか

キム・ボヨン、河出書房新社。宇宙船でAIがなぜか人間の体に移って、土星の惑星に住む人々の救助に向かう表題作がすばらしい。一人称のノワールで主人公が死んでしまう問題(語り手がいなくなる)はつねにあるが、AIならデータをバックアップすれば意識は残…

トゥルー・クライム・ストーリー

ジョセフ・ノックス、新潮社。リーダビリティはとても高く、犯人も意外で、メタフィクション的な作りもおもしろいのだが、いまいち乗れなかった。つくづく自分は麻薬常用者が好きではないのだと再認識した次第。というより、もしかすると『ポピーのためにで…

サン=フォリアン教会の首吊り男

ジョルジュ・シムノン、早川書房。シムノンは『黄色い犬』ぐらいしか読んだことがなかった。それもたぶん小学生のころだから、よさがわかるわけがありません。これはすばらしい。謎も魅力的だし、ラ・ボエーム的な若さの苦味もある。幕切れもよく、全体的に…

終りなき夜に生れつく

原作は文句なしの傑作。ドラマはミス・マープルを登場させる以外の点ではわりと原作をなぞっているが、一人称のナレーションが入った時点でネタバレになっている気もします。

グリーンショウ氏の阿房宮

『クリスマス・プディングの冒険』のなかの短篇が原作らしい。矢が頸動脈に刺さるとか、お得意の犯人のパターンとか、これまたお得意の出生の秘密とか、長篇向きの内容だと思いますけど。ドラマ向きにエピソードをふくらましたのかな。アルフレッド役のMartin…

同調者

モラヴィア、光文社。映画『暗殺の森』の原作の新訳。クアードリとリーナの死体の描写(p. 487〜)がすごい。 二人の遺体が丸二日も森のなかに放置されていたことを思い、太陽が、何時間ものあいだ二人を温め、にぎやかな羽音を立てる虫たちの生命をその体の…

カリブ海の秘密

また単独作品にミス・マープルを登場させたのかと思ったら、オリジナルのマープルものでした。完全な安楽椅子探偵というわけでもないのね。

死の10パーセント

フレドリック・ブラウン、東京創元社。どれも達者な短篇集。「殺意のジャズソング」なんかにしても、最後のひとひねりはなかなか思いつきませんよね。積読の『シカゴ・ブルース』も読まなければ。

陽炎の市

ドン・ウィンズロウ、ハーパーコリンズ。前半はマフィア要素が足りないかと思ったが、ハリウッドがからんできてから俄然おもしろくなった。『業火の市』のマフィア様式美と甲乙つけがたい。

怪物

狭い地域で起きる事件にできるだけツイストを盛りこもうとして、あまりに現実離れしてしまうよろしくないパターンでは。

ヒート2

マイケル・マン、メグ・ガーディナー、ハーパーコリンズ。映画を要約したプロローグの部分から傑作であることを確信。警報装置の解除で電柱にのぼっていると、ループの電車のにおいがする(でしたっけ?)とか、本筋とは関係のない細部も本当によくできてい…

鏡は横にひび割れて

この動機だけは忘れられない一作。それがわかっていると、ほかの要素はちょっと物足りない気も。