カリブ海の秘密

また単独作品にミス・マープルを登場させたのかと思ったら、オリジナルのマープルものでした。完全な安楽椅子探偵というわけでもないのね。

死の10パーセント

フレドリック・ブラウン、東京創元社。どれも達者な短篇集。「殺意のジャズソング」なんかにしても、最後のひとひねりはなかなか思いつきませんよね。積読の『シカゴ・ブルース』も読まなければ。

陽炎の市

ドン・ウィンズロウ、ハーパーコリンズ。前半はマフィア要素が足りないかと思ったが、ハリウッドがからんできてから俄然おもしろくなった。『業火の市』のマフィア様式美と甲乙つけがたい。

怪物

狭い地域で起きる事件にできるだけツイストを盛りこもうとして、あまりに現実離れしてしまうよろしくないパターンでは。

ヒート2

マイケル・マン、メグ・ガーディナー、ハーパーコリンズ。映画を要約したプロローグの部分から傑作であることを確信。警報装置の解除で電柱にのぼっていると、ループの電車のにおいがする(でしたっけ?)とか、本筋とは関係のない細部も本当によくできてい…

鏡は横にひび割れて

この動機だけは忘れられない一作。それがわかっていると、ほかの要素はちょっと物足りない気も。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

ダン・クワン、ダニエル・シャイナート監督、ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン。ちょっとわけがわからない。アカデミー賞ですか。うーん。

青いゼラニウム

原作は短篇集『火曜クラブ』に収録されている。児童書にも訳されているようだ。家族関係がわかりやすく、犯人もそれなりに意外で、なかなかよろしいのでは。

ミッドサマー

アリ・アスター監督、フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー。友だちに誘われてスウェーデンのカルト教団の儀式にまぎれこんでしまった学生たちの悲劇。全編明るくて、ホラー映画とは思えないが、よく作りこまれています。監督は日本の姥捨山にヒントを…

英国古典推理小説集

多くの翻訳ものとちがうアプローチの「読みやすさ」なので、勉強になる。初の女性探偵登場というパーキス「引き抜かれた短剣」など、話としてもよくできています。フィリークス「ノッティング・ヒルの謎」は、このネタにしてはちょっと長いかな。

チムニーズ館の秘密

これも原作はマープルではないが、1932年のダイヤモンド盗難事件と現在の殺人をつなげるプロットがよくまとまっている。ヴィクトリアをめぐる最後の謎がまさに「チムニーズ館の秘密」であるところもしゃれていますね(と思ったら、これはドラマオリジナルの…

スタイルズ荘の怪事件

アガサ・クリスティー、東京創元社。きっちり整った本格推理小説だが、密室、家の見取り図、紙の燃えさし、書きかけの文字など趣向も盛りだくさんで、デビュー作ならではの意気込みというか、気負いも感じられる。どんな作家もデビュー作はそうなるものです…

なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?

これも原作はマープルものではない。海岸で男が謎のことばを残して死んだ事件を解決するために、男女が素人探偵よろしくお城に乗りこむという枠組みだけ取って、あとは大胆に改変しています。

蒼ざめた馬

これも原作はマープルものではないが、ドラマでは、殺された友人の牧師の無念を晴らすためにマープルが現地に乗りこむ体裁となっている。こういうときのマープルは強い。犯人の意外性もあり、『ゼロ時間へ』と並ぶ佳作ではないか。

恐るべき太陽

ミシェル・ビュッシ、集英社。ポリネシアの島で展開する『そして誰もいなくなった』ふうの殺人。最初が入りづらいが、最後にパタパタと解決していくところは愉しい。読み終わってから全体を振り返ると、まあよかったかなと。

魔術の殺人

原作もマープルもの。ダウントン・アビーの人が出てますね。Murder with Mirrorsは「魔術」とはちょっとちがうのではと思ったが、Murder with Mirrorsは米題で、原題はThey Do It with Mirrors、奇術師はよく鏡を使うというマープルの台詞から来ている由。

ポケットにライ麦を

もとが名作だと思う。自分が育てたお手伝いさんが殺されたことに怒り、事件の解決に立ち上がるマープルがかっこいい。

殺人は容易だ

これももとはマープルではない単独作品。暗い。いくら殺人が容易だといっても、犯人は次から次へと殺しすぎでは? こんなに殺したら、誰でも偶然ではないとわかるし、犯人の目星もついてしまうのではないでしょうか。

別れる決心

パク・チャヌク監督、最初はなんのことやらさっぱりわからなかったが、途中からおもしろくなった。「愛している」と言っていないけれど、そう解釈できる台詞もよかったし、2回の殺人のハウダニットもよくできている。

モンスター・パニック

マックス・ブルックス、文藝春秋社。もっと早くサスカッチが出てもいいと思ったが、出てからはおもしろく、戦いのシーンもたっぷりあって後半は読ませる。ラスト、はたしてふたりの行方は。

泣く子はいねぇが

佐藤快磨監督、仲野太賀。脚本もいい、役者もいいのだが、こういうところにはまってしまう日本映画について考えてしまう。主人公が不憫で。もう少し明るいほうへ行ってほしかった。

ゼロ時間へ

原作はすぐれていると思う。なぜ犯行が左利きに見えたか、の説明など気が利いていて。でもドラマでは、なぜミス・マープルがここにいるのか、よくわからない。もともとノンシリーズ作品ですからね。

無実はさいなむ

おなじみ家族の確執ものだが、このシリーズのなかではいい出来だと思う。

悪魔はいつもそこに

ドナルド・レイ・ポロック、新潮社。内容はけっこうグロいけれども、不思議と嫌な印象は残らない。ヒッチハイカーを狩る夫婦の結末が意外にあっけなかったような。あと、滝本氏のあとがきがすごすぎる。

ヒート

マイケル・マン監督、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ。『ヒート2』を読むまえにということで。市街の銃撃戦のシーンが有名だが、ロスの夜景がきれい。だから『ヒート2』の表紙も夜景なのかと。しかしデ・ニーロはどんな役をやっても絵になりますね。…

怪物

是枝裕和監督、安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子。主人公の子供たちは5年生の設定よりもっと子供に見えたが。よくあんなにうまい具合に電車の廃車があったものだ(それともわざわざ設営?)。校長役の田中裕子が怖すぎる。ラスト、坂本龍一のAquaが沁みました…

はなればなれに

ドロレス・ヒッチェンズ、新潮社。犯罪にかかわる若者3人だけでなく、スキップの叔父(AAで更生!)やその犯罪者仲間など、まわりが充実していて読ませる。『俺たちに明日はない』などとはまったく別の結末に着地する、予想外の展開も見事。矢口さんご指摘の…

狼の幸せ

パオロ・コニェッティ、新潮社。あいかわらずいい雰囲気。グラッパにはハイマツの実が入ってるんですね。でもやはり『帰れない山』が一頭地を抜いているかな。

マイ・ディア・ミスター

IU、イ・ソンギュン。Facebookの韓国ドラマのグループでも大人気だし、『私の解放日誌』のパク・ヘヨンの脚本ということで、観なければと思った次第だが、ジアンがあまりに悪人なので嫌になった。エレベーターのなかでまえの人のポケットから携帯を盗んで、…

バートラム・ホテルにて

シタフォードに比べると、推理はわりときちんとしているけれど、マープルが探偵役をする必然性はありませんね。ホテルのメイドが刑事といっしょに活躍するし。