2023-01-01から1年間の記事一覧

予告殺人

家族の事情やその他の情報が多すぎて、なぜわざわざ予告したのかというところの印象が薄くなっていないだろうか。

愛に奉仕せよ

チャン・チョルス監督。ヨン・ウジン、ジアン。チャタレー夫人+愛の子リーダ的な。しかし意外な結末でした。閻連科の小説『人民に奉仕する』が原作だそうで、舞台を中国から北朝鮮に移したわけですね。

トゥ・ザ・サミット 絶壁のレース

スイスの登山家ウーリー・ステックとダニ・アーノルドの闘いを追ったドキュメンタリー。マッターホルン、アイガー、グランド・ジョラスの3大北壁をロープも使わず数時間で登る。PC画面で見ても身がすくむほどの壁。

パディントン発4時50分

書斎の死体も牧師館もそうだったが、このマープルは警察に煙たがられても平気そうだったり、あいかわらず気丈。犯人捜しは、家族の遺産争いと見せかけて……というのが定番の裏をかいたかたちでしょうか。

牧師館の殺人

小さな村で起きる殺人事件。時計のトリックと『ナイルに死す』を思わせる犯人像。ミス・マープル初登場。

8つの完璧な殺人

ピーター・スワンソン、東京創元社。たしかにおもしろいが、ほとんど登場と同時に犯人がわかってしまった。また、冒頭のネタバレ警告で、「私」がブログで取り上げた8つの作品以外にアクロイドが入っていることからも、その後の展開が読めてしまう。これを…

おいしいごはんが食べられますように

高瀬隼子、講談社。ふつうにおもしろいけれど、芥川賞というのが驚きです。芦川さんのような人、どんな組織にもいると思う。

書斎の死体

マクイーワン版のマープルはなんだか活動的&強気。犯人が原作とちがうのは、原作をすでに読んでいる人向けのサービスかもしれないけれど、わざわざ⚪︎⚪︎愛を持ち出す必要があったのか。アリバイづくりのためのすり替えや、遺体が計画外のところへ移動という…

どれほど似ているか

キム・ボヨン、河出書房新社。宇宙船でAIがなぜか人間の体に移って、土星の惑星に住む人々の救助に向かう表題作がすばらしい。一人称のノワールで主人公が死んでしまう問題(語り手がいなくなる)はつねにあるが、AIならデータをバックアップすれば意識は残…

トゥルー・クライム・ストーリー

ジョセフ・ノックス、新潮社。リーダビリティはとても高く、犯人も意外で、メタフィクション的な作りもおもしろいのだが、いまいち乗れなかった。つくづく自分は麻薬常用者が好きではないのだと再認識した次第。というより、もしかすると『ポピーのためにで…

サン=フォリアン教会の首吊り男

ジョルジュ・シムノン、早川書房。シムノンは『黄色い犬』ぐらいしか読んだことがなかった。それもたぶん小学生のころだから、よさがわかるわけがありません。これはすばらしい。謎も魅力的だし、ラ・ボエーム的な若さの苦味もある。幕切れもよく、全体的に…

終りなき夜に生れつく

原作は文句なしの傑作。ドラマはミス・マープルを登場させる以外の点ではわりと原作をなぞっているが、一人称のナレーションが入った時点でネタバレになっている気もします。

グリーンショウ氏の阿房宮

『クリスマス・プディングの冒険』のなかの短篇が原作らしい。矢が頸動脈に刺さるとか、お得意の犯人のパターンとか、これまたお得意の出生の秘密とか、長篇向きの内容だと思いますけど。ドラマ向きにエピソードをふくらましたのかな。アルフレッド役のMartin…

同調者

モラヴィア、光文社。映画『暗殺の森』の原作の新訳。クアードリとリーナの死体の描写(p. 487〜)がすごい。 二人の遺体が丸二日も森のなかに放置されていたことを思い、太陽が、何時間ものあいだ二人を温め、にぎやかな羽音を立てる虫たちの生命をその体の…

カリブ海の秘密

また単独作品にミス・マープルを登場させたのかと思ったら、オリジナルのマープルものでした。完全な安楽椅子探偵というわけでもないのね。

死の10パーセント

フレドリック・ブラウン、東京創元社。どれも達者な短篇集。「殺意のジャズソング」なんかにしても、最後のひとひねりはなかなか思いつきませんよね。積読の『シカゴ・ブルース』も読まなければ。

陽炎の市

ドン・ウィンズロウ、ハーパーコリンズ。前半はマフィア要素が足りないかと思ったが、ハリウッドがからんできてから俄然おもしろくなった。『業火の市』のマフィア様式美と甲乙つけがたい。

怪物

狭い地域で起きる事件にできるだけツイストを盛りこもうとして、あまりに現実離れしてしまうよろしくないパターンでは。

ヒート2

マイケル・マン、メグ・ガーディナー、ハーパーコリンズ。映画を要約したプロローグの部分から傑作であることを確信。警報装置の解除で電柱にのぼっていると、ループの電車のにおいがする(でしたっけ?)とか、本筋とは関係のない細部も本当によくできてい…

鏡は横にひび割れて

この動機だけは忘れられない一作。それがわかっていると、ほかの要素はちょっと物足りない気も。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

ダン・クワン、ダニエル・シャイナート監督、ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン。ちょっとわけがわからない。アカデミー賞ですか。うーん。

青いゼラニウム

原作は短篇集『火曜クラブ』に収録されている。児童書にも訳されているようだ。家族関係がわかりやすく、犯人もそれなりに意外で、なかなかよろしいのでは。

ミッドサマー

アリ・アスター監督、フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー。友だちに誘われてスウェーデンのカルト教団の儀式にまぎれこんでしまった学生たちの悲劇。全編明るくて、ホラー映画とは思えないが、よく作りこまれています。監督は日本の姥捨山にヒントを…

英国古典推理小説集

多くの翻訳ものとちがうアプローチの「読みやすさ」なので、勉強になる。初の女性探偵登場というパーキス「引き抜かれた短剣」など、話としてもよくできています。フィリークス「ノッティング・ヒルの謎」は、このネタにしてはちょっと長いかな。

チムニーズ館の秘密

これも原作はマープルではないが、1932年のダイヤモンド盗難事件と現在の殺人をつなげるプロットがよくまとまっている。ヴィクトリアをめぐる最後の謎がまさに「チムニーズ館の秘密」であるところもしゃれていますね(と思ったら、これはドラマオリジナルの…

スタイルズ荘の怪事件

アガサ・クリスティー、東京創元社。きっちり整った本格推理小説だが、密室、家の見取り図、紙の燃えさし、書きかけの文字など趣向も盛りだくさんで、デビュー作ならではの意気込みというか、気負いも感じられる。どんな作家もデビュー作はそうなるものです…

なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?

これも原作はマープルものではない。海岸で男が謎のことばを残して死んだ事件を解決するために、男女が素人探偵よろしくお城に乗りこむという枠組みだけ取って、あとは大胆に改変しています。

蒼ざめた馬

これも原作はマープルものではないが、ドラマでは、殺された友人の牧師の無念を晴らすためにマープルが現地に乗りこむ体裁となっている。こういうときのマープルは強い。犯人の意外性もあり、『ゼロ時間へ』と並ぶ佳作ではないか。

恐るべき太陽

ミシェル・ビュッシ、集英社。ポリネシアの島で展開する『そして誰もいなくなった』ふうの殺人。最初が入りづらいが、最後にパタパタと解決していくところは愉しい。読み終わってから全体を振り返ると、まあよかったかなと。

魔術の殺人

原作もマープルもの。ダウントン・アビーの人が出てますね。Murder with Mirrorsは「魔術」とはちょっとちがうのではと思ったが、Murder with Mirrorsは米題で、原題はThey Do It with Mirrors、奇術師はよく鏡を使うというマープルの台詞から来ている由。