2012-01-01から1年間の記事一覧

ファイアーウォール

ヘニング・マンケル、東京創元社。大好きなシリーズだが、今回の事件はいまひとつか。コンピュータやハッカーがフィーチャーされている話は概して好きになれない。物語にとって大切な何かがブラックボックス化されてしまうように思えるから。しかも、ネット…

ティーレマン+ドレスデン国立歌劇場管弦楽団@サントリーホール

ティーレマンに、ドレスデンに、ワグナー、ブルックナーとくれば、自分的にははずれようがないのだけれど、いくつか不満は残った。 トリスタンの前奏曲の出だしでは「これだ」と思ったが、「愛の死」に入るとアンサンブルが少々ばらけた感じ。ブル7も、第2…

無罪

スコット・トゥロー、文藝春秋。ミステリー小説にこれ以上何を望むというほどのでき。証言台でのサビッチの淡々とした、含みのある話しぶりは『推定無罪』を思い出して懐かしい。

湿地

アーナデュル・インドリダソン、東京創元社。ヴァランダー・シリーズのミニ版といった雰囲気。ただし舞台はアイスランド。土地柄を活かした内容もさることながら、話の展開のペース配分がうまい作家だと思った。

失脚/巫女の死

デュレンマット、光文社古典新訳文庫。劇作家としてのセンスが随所に感じられる名作ぞろい。「スイスの筒井康隆」と呼ばせていただきます。とくに「失脚」。 あえて難を言えば、「巫女の死」が最初ちょっと取っつきにくいかな。

パーヴォ・ヤルヴィ、フランクフルト放送交響楽団

久々にサントリーホールに出かけたところ、リストのピアノ協奏曲を弾いたアリス=紗良・オットさんがなんと裸足。初めて見た。日本人はふだん家のなかで靴をはかないからペダリングに難あり、なんて話を聞いたことがあるけれど、なるほど、こんな手もありま…

水滸伝(十八、十九)

北方謙三、集英社文庫。童貫との本格決戦。『水滸伝』全篇をつうじていちばん感動したのは、楊令が王進のもとから出てきて梁山泊に加わるところで、これは一生忘れられない場面になった。

水滸伝(十六)

北方謙三、集英社文庫。千人・万人規模の戦いの描写も見事(たとえば、史進が童貫と初めてまみえる場面)だが、本巻では燕青と洪清の1対1の戦いが別格のすばらしさ。 戦略や人の心の機微もいちいち筋が通っていて、ミクロからマクロまで、すべてを燦然と読…

水滸伝(十二)

北方謙三、集英社文庫。官軍側に囚われた廬俊義と、それを救い出す燕青は、男色をも超えた結びつき。 青蓮寺の李富のことば。「梁山泊もそうだな。全員の心がひとつなどということはあるまい。理想で動いている者もいれば、恨みで動いている者もいる。流れに…

冬の灯台が語るとき

ヨハン・テリオン、早川書房。スウェーデン、エーランド島に越してきた家族。灯台岬の歴史を綴った女性の手記。冬の別荘を狙って盗みを働く若者たち。新任の婦警。納屋にひそむ幽霊たち。ばらばらだった断片がやがてひとつにつながり、凶暴なブリザードとと…

水滸伝(九)

北方謙三、集英社文庫。中断していたのを再開。読了してから感想を書こうと思ったが、どうしても我慢できず。たとえば、九巻に出てくる飛竜軍の飛。かつて魯智深を救い、今回柴進を救ったとはいえ、全体として見れば端役だが、それでも強い印象を残す。なぜ…

クイケンのマタイ受難曲

畏敬の念を抱くリヒター盤とまたちがって、水が砂地にしみこむように体にすーっと入ってくるマタイ。新年早々、ええもん聴かしてもらいました。

ミスター・クラリネット

ニック・ストーン、RHブックスプラス。ハイチの悲惨さ、怖ろしさ。主人公が仕事で旅して帰ってくるシンプルな筋立てかと思いきや、意外にミステリー的なひねりもあって愉しめた。

マーラー交響曲第1番@府中の森芸術劇場

昨年の備忘録。地元の文化施設も応援しなければと、9月に出かけたのでした。金聖響、山根一仁(vl)、日本フィルハーモニー交響楽団による、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲とマーラー交響曲第1番「巨人」。 若いマーラーの天才が遺憾なく発揮された第1…