2016-01-01から1年間の記事一覧

マプチェの女

カリル・フェレ、早川書房。力作。中途半端に妥協せず、ぐいぐい押すところに好感。ですが、好みからするとちょっと残酷すぎ。アルゼンチンの事情もよくわかる。これがかの国の実態と考えるべきなのか。

パーフェクト・ストーム

なぜ突然見たくなったのか。こういう話だろうと想像したとおりの話。ラストはちょっと意外だったけれども。

プレイバック

レイモンド・チャンドラー、早川書房。ロバート・B・パーカーはこのマーロウをめざしていたのではないかという気がする。 p. 10 「朝早くから、よくそんなちゃらいことが言えるわね」 p. 24 「そいつはいいね、ヴァーミリア。私の潜在意識はぐっとかき立て…

ミスター・メルセデス

スティーヴン・キング、文藝春秋。キング・テイストはばっちりだけれども、「ミステリー」としては弱いのではなかろうか。しかしキングの健筆にも驚く。

ブエノスアイレス/ブエノスアイレス摂氏零度

ワン・カーウァイ、トニー・レオン、レスリー・チャン。あえて粗い画質にしているのか。画面の切り替えや光の使い方など独特。物語は切なく、トニー・レオンが抜群にうまい。メーキングを見ると、ほとんど脚本も決まらないままブエノスアイレス入りし、レス…

その雪と血を

ジョー・ネスボ、早川書房。かならずしも好きな作家ではないのだけれど、うまい。ノルウェー版ファンタジーふうノワール。

スノーマン

ジョー・ネスボ、集英社文庫。なるほどこういう作家でしたか。ちょっとイアン・ランキンにつうじるものがあるかもしれない。もう少し短くなるといいかもしれませんが。

笑う警官

M・シューヴァル、P・ヴァールー、角川文庫。新訳による再読。永遠の名作ですね。なぜひとりの顔だけ激しく吹き飛ばされていたのか。そんな細かいところにも伏線が張り巡らされている。

狼の領域

C・J・ボックス、講談社文庫。シリーズ中屈指のできだろう。この設定で、この登場人物なら、いつかこういうことが起きたはずだという納得感もある。敵が強いと物語が引き締まりますね。

ビューティフル・マインド

ロン・ハワード、ラッセル・クロウ。すばらしい。ラッセル・クロウの表情にいちいち説得力がある。ミステリー仕立てにもなっているし、授賞式の場面は感動的。

アイズ・ワイド・シャット

キューブリック、クルーズ、キッドマン。全篇に漂う「作り物」感がキューブリックらしいと言えばらしいけれど、これもなぜ撮りたかったのかなあ。『誰よりも狙われた男』以外に、F***で終わる映画を見つけられたことは収穫でしたが。

J・エドガー

イーストウッド、ディカプリオ、ワッツ。イーストウッドがなぜこの映画を撮ったのか、いまひとつわからない。

インビクタス 負けざる者たち

映画でこれほど泣いてしまうとは。マンデラが選手の名前を一人ひとり言うところで涙腺崩壊。この南アフリカのワールドカップ優勝にしても、3・11のあとの日本女子サッカーにしても、実力プラスアルファの力が働くときがあるのだと思う。

ダニエル・クレイグ007

ふと思い立って、ダニエル・クレイグになってからの007を見る。 『カジノ・ロワイヤル』。たとえばル・カレ原作の映画と比べたら、プロットなどなきに等しく(最後になぜ主人公ふたりが敵から解放されたのかという謎解きはあったものの)、ほとんどクレイ…

ヒアアフター

イーストウッド監督。さすがよくできている。マット・デイモンはこういう役もはまるのがすごい。マーカス少年もうまい。お伽噺のような終わり方。ジョージ(マット・デイモン)がディケンズ好きで、ロンドンを訪問した理由がディケンズの生家(思ったより小…

あなたの自伝、お書きします

ミュリエル・スパーク、河出書房新社。私にはまだよさがわからない模様。

映画 立川談志

イリュージョン「やかん」はわけがわからなかったが、「芝浜」は見事。ご本人は嫌いだという人情噺、しかし「こういうのやらせるとうまいんだ」とおっしゃるとおり、落語の神様がおりてきている。立川流は、(自分の業界とも相通じる)師匠と弟子の関係につ…

伝記について

丸谷才一さんのエッセイのbotより。 フランス人はイギリス人を「長篇小説の国」と呼ぶ。長篇小説発祥の地であることに敬意を表してである。しかしイギリスには、長篇小説と同じくらゐに、書かれ、読まれ、重んじられ、発達してゐる文学形式があつて、それは…

拾った女

チャールズ・ウィルフォード、扶桑社文庫。最後の「驚き」は必要だったのか。パルプ・ノワールとしての全体の質を考えると、必要ではなかった気がする。むしろ味を損なっているのでは。こう考えるのは少数派なんでしょうが。

ナイト・マネジャー

ジョン・ル・カレ原作のドラマ化。展開のテンポは早いし、画面の美しさは特筆もの、役者の演技も立派だけれど、主人公がなぜここまで復讐に燃えるのかという動機の部分が弱いのではなかろうか。つまり、最初の恋愛のところ。ちなみに、第5話にル・カレ御大が…

オリバー・ツイスト

あらゆる画像バージョンのなかで原作にいちばん忠実なのは、BBCの旧版。新版は、映像は美しいしフェイギンやナンシーの新しい造型(PC配慮?)はおもしろいが、だいぶはしょっている。 しかし、『ザ・ドロップ』といい、トム・ハーディは犬と縁があるんで…

背信の都

ジェイムズ・エルロイ、文藝春秋。長い。人が多い。けれども、この味わいは何物にも代えがたい。

朝が来る

辻村深月、文藝春秋。うまい。最初の養子を得た夫婦の部分があまりにもうまいので、生みの母親の部分に入ったときには物足りないと感じたが、それも後半は盛り返して、スリルで読ませる。ただ、ラストはちょっと安易では?

こころ

夏目漱石。いまさらですが。 しかし悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているんですか、そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にあるはずがありませんよ。平生はみんな善人なんです、少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという…

異形の白昼 恐怖小説集

筒井康隆編、ちくま文庫。『厭な物語』『もっと厭な物語』というすぐれたアンソロジーがあるが、これはその斜め上をいく。すべて日本人が書いたものだからここまですごいのか。アンソロジストとしての筒井康隆がすごすぎるのか。よくここまで気味の悪い話(…

キム・フィルビー かくも親密な裏切り

ベン・マッキンタイヤー、中央公論新社。フィルビーは、キャリアの途中で変心したわけではなく、学生時代から筋金入りの共産主義者で、スパイをするためにイギリス外務省に入ったのでした。1945年、ソヴィエト領事館職員のヴォルコフがイスタンブールのイギ…

ささやかで大きな噓

リアーン・モリアーティ、創元推理文庫。訳がうまくて愉しい。ただ、もう少し短くてもよかったのかなと。舞台がオーストラリアというのも新鮮ですね。

ジャック・リッチーのびっくりパレード

ジャック・リッチー、早川書房。どれもさすがのできですが、とくに天然ふうに間の抜けたヘンリー・ターンバックルものがすばらしい。

メンタリスト シーズン6

レッド・ジョンについてはこれで解決? 7人の候補者をレッド・ジョンがすべて知っていた謎など、まだ伏線を回収しきっていない気もしますが。 レッド・ジョンの長い縦糸と、個々の事件の短い横糸を織り交ぜて、というのがこのシリーズの大きな魅力だったと…

灰色の北壁

真保裕一、講談社文庫。表題作を筆頭に3篇ともよくできている。ただ、どの作品にも、主人公の動機のひとつとしてかならず、ある女性のために、というのが出てくるのが気になる。世界最高峰の壁に挑んでいるときに、女性も何もないだろうと思うのだ。あるの…