2019-01-01から1年間の記事一覧

五匹の子豚

アガサ・クリスティー、早川書房。途中まで真相がわかったので、もしかすると昔読んで忘れていたのかと思ったけれど、やはり読んでいなかったのかな。こういう叙述トリックはいかにもクリスティーらしい。ただ、ひと昔前の事件を解明するために関係者全員が…

ザ・ソプラノズ シーズン5

少し展開があった。といっても、FBIに情報を流していた彼女の末路とか、ニューヨークのボスの逮捕とか、予想外というほどではない。それでも見てしまうところがミソ。

葬儀を終えて

アガサ・クリスティー、早川書房。『そして誰もいなくなった』や『アクロイド』、『ナイル』など有名作品の陰に隠れて目立たないが、これは傑作。クリスティーの冷たい観察眼も愉しめるし、関係者を集めての大団円やトリックも含めて、じつに端整な仕上がり…

地の底の記憶

畠山丑雄、河出書房新社。英語の関係代名詞節のように、主節から話がどんどん離れてうしろにつながっていく。途中、着地点はまったく見えないが、最後にはきちんと着地。不思議な愉しい感覚を味わいました。

メインテーマは殺人

アンソニー・ホロヴィッツ、創元推理文庫。相変わらずよく練られた謎解きだが、カササギのときほどは感心しなかった。なぜだろう。ホーソーンに魅力がなかったからか。カササギの多層構造に比べて事件がシンプルすぎたからか。もとより個人的にはあまり謎解…

生まれながらの犠牲者

ヒラリー・ウォー、創元推理文庫。13歳の娘の失踪というワンイシューでよくこれだけ読ませる。各警官のキャラクターや個人的な背景が豊かな北欧ものを読み慣れたせいか、署長をはじめ、地味に捜査を進めるあまり色のない警官たちがクロフツっぽいと思ったり…

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番/交響曲第3番

インキネン、日フィル、ヴォロディン。PC4番はもともと異色の曲であるうえ、ヴォロディンのなめらかで細やかな演奏によって、なんだかベートーヴェンとは思えないような味わい。アンコールのシューマン/リスト「献呈」は、過去に聴いたなかで最高でした。翌…

休日はコーヒーショップで謎解きを

ロバート・ロプレスティ、創元推理文庫。選者の目が光る短篇集。どれを読んでも不快にならないところがすばらしい。

定家明月記私抄および続篇

堀田善衛、筑摩書房。すばらしい。兄弟姉妹もわが子も30人近くいるとか、SFかよ平安時代。新古今のエッセンスもわかった気分になる。そのうち再読したい。

厳寒の町

アーナルデュル・インドリダソン、東京創元社。安定の読み心地。残り少ないページ数でどうまとめるのかと思ったら、ちゃんとできましたね。

ザ・ソプラノズ シーズン4

夫婦の危機。ドラマのシーズンが進むたびに子供たちが現実に大きくなっていくのがおもしろい。ハリーポッター式というか。

IQ2

ジョー・イデ、早川書房。人がごちゃごちゃ入り乱れて何度も人物紹介表を見ることになったが、それも本書の味。アイゼイアも黒人、知的、孤独好き、犬好きと、なかなかユニークないいキャラクターです(前作ではホームズと比較されたが、ぜんぜんちがう)。…

回復する人間

ハン・ガン、白水社。原書の表題作「火とかげ」、「エウロパ」、「フンザ」が印象に残った。「青い石」の長篇バージョンも読んでみたい。「左手」は、ひとつの異変が進むだけ進んだらどうなるかという、『菜食主義者』を思わせる展開。「回復する人間」の未…

あなた、その川を渡らないで

チン・モヨン監督のドキュメンタリー映画。仲のいい老夫婦の日常を撮っているだけなのに、惹きつけられる。犬たちも哀愁を添えている。連れ合いの死期が近づいたとき、来世で着るために服を焼いたり、経帷子を干したりして、少しずつ準備していくとは知らな…

私たち異者は

スティーヴン・ミルハウザー、白水社。ちょっと変わった幽霊譚の表題作がまずすばらしい。「平手打ち」も「白い手袋」も印象に残るし、「大気圏外空間からの侵入」も使い古された設定ながら新しさがある。「The Next Thing」も不気味で暗示的。この人は細か…

ザ・ソプラノズ シーズン3

あいかわらずダラダラ見ております。トニーの奥さんがだんだん気の毒になってきた。

なかなか暮れない夏の夕暮れ

江國香織、角川書店。大島真寿美の文体が遊園地の乗り物だとすれば、こちらはロールスロイス。驚きや愉しさはないが、安心して身をまかせられる。 それにしても、稔は本ばかり読んでいるのに、なぜこうももてるのか。「チーズなら無難だから」といった女性の…

すべての、白いものたちの

ハン・ガン、河出書房新社。生まれてすぐに亡くなった姉への思いを、白いものに託して詩的に綴った小説ともエッセイとも言えそうな作品。白いページの紙質に何種類かあることからもわかるように、本の作りもたいへん丁寧。

イタリアン・シューズ

ヘニング・マンケル、東京創元社。新刊が出るとかならず読む作家だけれど、ヴァランダー・シリーズではない単独作品のこれは、うーむ、という感じでした。なぜこんなに「死」のことばかり書いているのか。作者が自分の癌を知るのはもっとずっと先なのに。そ…

Skrowaczewski the complete oehmsclassics recordings

全体的に、深い読みに支えられた潑剌たる演奏。なかでもブラームスの2番、3番がくっきりとした造形で見事。ベートーヴェンの5番にも感心した。エロイカ第1楽章の超特急にはびっくり。また、とりわけ印象に残ったのが、ブルックナー9番のアダージョ。ものすご…

ディオゲネス変奏曲

陳浩基、早川書房。思い浮かべたのは星新一。自分の読書は圧倒的にアイデアより人物なのだが、これだけアイデアを並べられると文句のつけようがない。「藍を見つめる藍」ではっとさせられ、「時は金なり」、「作家デビュー殺人事件」、「いとしのエリー」な…

菜食主義者

ハン・ガン、CUON。連作中篇とも言えるし、ひとつの長篇とも言える。ある日いきなり菜食主義者になって、しまいに食べること自体を拒み、植物になろうとしている女をめぐる物語。作品ノートに「慰めや情け容赦もなく、引き裂かれたまま最後まで、目を見開い…

ピクニック・アット・ハンギングロック

ジョーン・リンジー、創元推理文庫。夢の内容は小説になりうるか、というテーマを考察していたのは筒井康隆で、それが「熊ノ木本線」や「遠い座敷」といった短篇に結実したのだが、ここに外国産ながら見事な長篇があったではありませんか。といっても、実話…

ザ・ソプラノズ シーズン2

これといった展開はないのに(といっても、リッチーとプッシーの退場はあり)だらだらと見てしまう。よくできたドラマなのだろう。トニーの姉の扱いには少し驚いた。ちなみに、冒頭のテーマ曲の映像に出てくる豚の看板の肉屋が重要な役割を果たしているが、…

Xという患者

デイヴィッド・ピース、文藝春秋。訳は本当にすばらしい。芥川の文章と渾然一体となって読者を翻弄する。これの関東大震災のところを読んでいたら、大河ドラマ『いだてん』も震災だったというセレンディピティ。 ただ、どうしても気になることが。これを言う…

少年が来る

ハン・ガン、CUON。まごうかたなき傑作。胸が、目頭が熱くなる。とくに少年の母ちゃんの章。エピローグの、少年の兄のひと言。「誰も私の弟をこれ以上冒瀆できないように書いてください」 ほんの39年前の話である。ここから民主化まで持っていった韓国の人々…

フランク・オコナー短篇集

フランク・オコナー、岩波文庫。これは大きな拾い物だった。たいした事件は起きないのだが、じつに味わい深い。「ぼくのエディプス・コンプレクス」や「はじめての懺悔」の子供視点もいいし、「国賓」、「花輪」も秀逸。「ジャンボの妻」の疾走感と、「汽車…

荒涼館

チャールズ・ディケンズ、岩波文庫。ディケンズの登場人物は総じて善人寄りだが、エスターほどの善人は珍しい。ジャーンダイス氏も善人だけれど、彼のせいでリチャードやスキンポールがああなったと言えなくもないので、なんとも。 エスターとレディ・デッド…

主戦場

ミキ・デザキ監督。わかっていたことだが、ナショナリストがいかに平板で誤ったストーリーを憶えこんであちこちでくり返しているか。どこかにこれ専門の教育機関があるのだろうと思うほど。そして、これが将来のわが国の標準になるのか。最後に出てきた日本…

ザ・ソプラノズ シーズン1

少し古いドラマだけあって、話の進み方はゆっくりめだが、すっかり鬱になっていたトニー(ガンドルフィーニ)が暗殺されそうになってから復活するところの演技には感心した。人がちがったようにしゃきっとして、凄味すら出てくる。 ニュージャージーのしょぼ…