ピクニック・アット・ハンギングロック

f:id:Harpo:20190624232705j:plain

ジョーン・リンジー創元推理文庫。夢の内容は小説になりうるか、というテーマを考察していたのは筒井康隆で、それが「熊ノ木本線」や「遠い座敷」といった短篇に結実したのだが、ここに外国産ながら見事な長篇があったではありませんか。といっても、実話の可能性もゼロではないのだが。

大昔に映画を見た記憶がある。池袋文芸座だったか。白いドレスの少女たちが山を登っていくところしか憶えていないが、その原作である。事件はシンプルだけれど、小説としてじつによくできていて、たしかに解説の金原さんが指摘しておられるように、ラムリー兄妹のエピソード(火事)と、セアラとアルバートのエピソード(じつは生き別れの……)を初めとして、周辺部分が充実しているのでリーダビリティが高い。