2013-01-01から1年間の記事一覧

11/22/63

スティーヴン・キング、文藝春秋。改変が大きなものであればあるほど「過去」が妨害してくるというアイデアが秀逸。上巻のクライマックスは「二十日鼠と人間」の演劇のエピソード。下巻に入るとややつまらなくなる(政治などのこむずかしいことを小説で読ま…

ビリー・バッド

メルヴィル、光文社古典新訳文庫。筋は単純そのものだけれど、メルヴィル流の脱線に妙味がある。『白鯨』挫折者なのでなんとも言えないが、この雰囲気を拡大したものなのだろうか。

フリーファイア

C.J.ボックス、講談社文庫。相変わらずのおもしろさ。イエローストーンに法律の空白地帯があったとは。まあ全体として筋が読めなくもないのだが、イエローストーンの大きさ深さ美しさに惹かれるし、ジョーたち家族やネイトらの活躍は年に一度は読みたい。

ミステリガール

ちょっとひねりすぎかなあ。映画の蘊蓄も『二流小説家』のSF小説ほどには愉しめなかった。しかし、工夫は充分感じられます。3作目もがんばってほしい。

出訴期限

スコット・トゥロー、文藝春秋。『無罪』のひとつまえの作品とのこと。『無罪』より小ぶりな感じだが、やはりトゥローの味わいは格別。最後に「ミステリー・ベスト10」が載っているのもグッド。

喪失

モー・ヘイダー、早川書房。未訳の前作から続いている話(しかも殺人がらみ)がよく見えないのが難点だが、それを除けば立派なもの。イギリスの作家だけれども、話の端折り方(と言って悪ければ、エピソードのつなげ方)がアメリカのテレビ番組と似ているか…

特捜部Q―カルテ番号64―

ユッシ・エーズラ・オールスン、早川書房。カール・マーク、アサド、ローセのチームワークが愉しい。デンマークに実在した女子収容所に取材し、そこの物語を現在進行の捜査と交互に織り交ぜたのも、リーダビリティアップに貢献。ただ、地の文にカール視点で…

コリーニ事件

フェルディナント・フォン・シーラッハ、東京創元社。長篇というより、いつもの短篇ひとつを少し引き延ばした感じ。つまり、あくまで「自分にとっては」梗概を読んでいるのと同じで、読む行為そのものに喜びがない。これはもう相性が悪いというしかありませ…

チャイルド・オブ・ゴッド

コーマック・マッカーシー、早川書房。とうてい内容のすべてを理解しているとは言いがたいが、強く惹かれる。斧の刃を鍛えることへのこだわり。火への執着。でもやはり国境3部作が好きです。

シスターズ・ブラザーズ

パトリック・デウィット、東京創元社。語り手である弟イーライがいいやつなので、物語全体に好感が持てる。ノワールというよりは(西部開拓時代の)ロードノベル。最初のあたりのさまざまなエピソード(毒グモとか)は何のためにあるのかよくわからなかった…

赤く微笑む春

ヨハン・テオリン、早川書房。『冬の灯台〜』のほうがよかったかなあ。謎解きが入る後半は愉しめた。前半にもう少しドライブ感があればと思うが、このシリーズにそれを求めるのは筋ちがいで、ゆっくりと味わうべきですね。

夜よ鼠たちのために

連城三紀彦、実業之日本社。「二つの顔」「過去からの声」「化石の鍵」「奇妙な依頼」「夜よ鼠たちのために」「二重生活」の6篇。どれもすばらしい。「二つの顔」や表題作など、英訳すればMWA賞ものではないだろうか。いちいちトリックを考えているところが…

夕萩心中

連城三紀彦、講談社。「花葬」連作の「花緋文字」「夕萩心中」「菊の塵」の3作と、「陽だまり課事件簿」の3篇、「白い密告」「四つ葉のクローバー」「鳥は足音もなく」。 「戻り川心中」に連なる3作はやはりレベルが高いが、書き進めるうちにミステリーと…

終りなき夜に生れつく

アガサ・クリスティー、早川書房。途中まで、わりとふつうの話ではないかと思っていたが、大まちがい。驚きが待っていた。同じトリックの超有名作より大人の味。「ダーク」クリスティーが横溢する名作です。

The Mentalist

はまっていると言ってよろしかろうと思う。 最初はちょっと極端なキャラクターの色分けと、捜査の進展がやたら速いこと(容疑者特定などパソコンでほんの数秒)に驚いたが、シーズン1の第16話『血眼』(どういうタイトル?)と第17話『狙われたカーネリアン…

キャサリン・カーの終わりなき旅

トマス・H・クック、早川書房。この作家の小説には「静かな推進力」がそなわっていて、それが読書の喜びを与えてくれるのだが、本作にはあまりそれが感じられなかった。理由は不明。個人的にはローラ・フェイ〜のほうが愉しめた。

春にして君を離れ

アガサ・クリスティー、ハヤカワ文庫。傑作です。クリスティー観が完全に変わった。なんと冷たい視線だろう。それもどっしりとした、氷山のような冷たさ。恐るべき作家。

終わりの感覚

ジュリアン・バーンズ、新潮社。落ち着いた筆致、文学的味わいもたっぷりで、謎解きまであり、いつもなら文句なしのはずなのだが、あまりぐっと来なかった。なぜかはわからない。そういう体調だったということか。それとも結局のところ、「二十年以上も前に…

厭な物語

A・クリスティー他、文春文庫。最後のフレドリック・ブラウンのうまさに舌を巻く。でもいちばん「嫌な」話はランズデールか。ソローキンもよかった。やはりロシア文学好きです。

罪悪

フェルディナント・フォン・シーラッハ、東京創元社。この作家とは徹底して相性が悪いらしく、前作も本作も世評はきわめて高いのに、どこがいいのかさっぱりわからない。これも最初の3篇があまりに不愉快だったのでもうやめようかと思ったが、せめて最後の…

カーテン

アガサ・クリスティー、早川書房。全体に暗い話。手放しで大傑作と言いたいところだが、前半は正直言って少し退屈だった。しかし後半のたたみかけと真相のダークさは見事です。