同調者

モラヴィア、光文社。映画『暗殺の森』の原作の新訳。クアードリとリーナの死体の描写(p. 487〜)がすごい。

二人の遺体が丸二日も森のなかに放置されていたことを思い、太陽が、何時間ものあいだ二人を温め、にぎやかな羽音を立てる虫たちの生命をその体の上に引き寄せておいて、やがて夏の甘い夜の暗い静寂のなかに置き去りにし、ゆっくりと去っていくところを想像した。夜露が彼らの頬に涙をこぼし、そよ風が高い梢のあいだや下生えの茂みから彼らに話しかけていたのだろう。翌朝、日の出とともに前日と同じ光と影が戻ってきて、まるで集会でもしているかのように、微動だにせずに横たわる二つの体のうえでたわむれる。……二人の体の下では、押さえつけられた地面が、硬直した体を草と苔のふかふかのベッドで少しずつ動かしながら、無言の要求を受け容れ、懐のなかに二人を迎え入れる準備をしている……。