Claudio Abbado The Symphony Edition

思えばアバドもちゃんと聞いたことがなかった。ゼルキンとのモーツァルトのピアノ協奏曲は愛聴していたけれど。
アバドはあくまで誠実に、丁寧に音楽を作っていく。多くのオケがたんに音を伸ばすところで、繊細な強弱をつける。そういう意味で、モーツァルトでは39番、40番が出色だと思った。ハイドンなら100番や101番、ベートーヴェンは6番、7番か。シューベルトはどれもすばらしいが、5番の優雅さがとくに印象に残った。メンデルスゾーンは自家薬籠中のもの。そしてブラームス、前半のCDではいちばん気に入った。メンデルスゾーンから一転して、音に厚みと底光りがある。曲としてはあまり好きではない1番の終楽章など、久々にぞくぞくした。2番もいい按配。
さて、残るはブルックナーマーラーブルックナーウィーンフィルなんですね。5番を筆頭に、意外にダイナミックで力強い演奏。7番のスケルツォなど速い速い。9番は自分のブルックナーのイメージからは離れるが、非常に美しい。たとえば、第1楽章の空を飛ぶようなところ(第2主題)の美しさは過去に聞いたCDのなかでも指折り。マーラーは、すべてライブでありながらこの演奏のクオリティの高さに驚く。3番などこの曲の演奏のなかでも屈指と思うが、録音の音が小さいのが残念。5番の第2楽章にはちょっと聞いたことのない響きがあった。9番はバーンスタインの激情には欠けるものの、やはりきわめて美しい。ただし第2楽章は高速。
眼福ならぬ耳福というのがあるのだろうか。あるならこのセットがまさにそうだった。ごちそうさまです。