本
タナ・フレンチ、早川書房。アイルランドの田舎に引っ越した元警官の主人公が、地元の子に頼まれて、その子の兄を捜索する話。最後に関係者とのあいだでもうひと山あるのかと思いきや……。しかし、こういう静かな終わり方も、この地域にふさわしい気がする。
エルヴェ・ル・テリエ、早川書房。文学的な思考実験。ワンアイデアものだが、最後まで飽きさせない。
パオロ・コニェッティ、新潮社。『帰れない山』よりまえに書かれた作品だが、やはり似ている。男友だちとの静かな交流を描くのが本当にうまい人。
ライオネル・ホワイト、新潮文庫。最後が美しいと言っていいほどの虚無。すばらしい。
アーナルデュル・インドリダソン、早川書房。今回は死後の世界や幽霊が出てくるので、いつにも増して静かで寒い印象。事件は解決するようで解決しないのですが。
柳家小三治、講談社文庫。おもしろい。とくに駐車場物語、郡山先生、玉子かけ御飯。
アンディ・ウィアー、早川書房。大傑作。逆境でも明るくがんばるキャラを書かせたら、いま世界でウィアーの右に出る者はいません。
アガサ・クリスティー、早川書房。人物像が反転するおもしろみ。『ナイルに死す』の凝縮版とは霜月さんの評。たしかに。ナイルの豪華な感じも好きですけどね。
M・W・クレイヴン、早川書房。おもしろくはあるのだが、ほぼ最初から犯人はわかっていて、ハウダニットだけで引っ張る。つまり犯罪のスコープが狭すぎるような。血液を一致させるトリックも少々無理筋という気もするし。ストーンサークルのほうが上ですかね?
アガサ・クリスティー、早川書房。少しずつ謎の答えを示しながら、同時に謎を足していく構成、配置のうまさは相変わらず。たとえば、ニコルソン博士やアラン・カーステアーズの出し方、写真の女性の正体など。主人公のふたりは死人が出ても、自分が殺されか…
アガサ・クリスティー、早川書房。クリスティーの戯曲は、いつものストーリーや人間関係を煮詰めて濃厚にしたような味わいがありますね。これももっと長い小説にできそうだけれど、戯曲として凝縮されている。
アガサ・クリスティー、早川書房。さすがにゴージャス。陰謀がひとつではないところがミソかと。風景といい、トリックといい、映像映えしそうですね。
アガサ・クリスティー、早川書房。あまりにも名高い作品の再読(?)。短いなかにクリスティー的要素がぎゅっと詰まっている感じ(とくに重要人物の行動の動機)。
リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク、扶桑社ミステリー。切れ味鋭いショートショート的な味わいで、どれもすばらしい。刑事コロンボでは本当にお世話になりました。
チョン・ヘヨン、ハーパーBOOKS。ちょっとプロットをいじりすぎではないかなあ。もちろん、すべてがリアルである必要はないのだが。
C・J・ボックス、東京創元社。安心して読めるシリーズだけれど、今回はネイトの役割がうーんという感じ。個人的には、メアリーベスの母親が少々苦手で……。
トーマス・サヴェージ、角川文庫。名作。入念な人物造形とカウボーイたちの生活描写が秀逸。最後は加速度的にサスペンスが高まる。作者はゲイ(バイセクシャル?)だったようだが、ほかの作品も読んでみたい。
エリー・グリフィス、創元推理文庫。どう考えても自分向きではありませんでした。ヴィクトリア朝ゴシックを期待したのだが……。犯人はたしかに意外だけれど。
ジェフリー・ディーヴァー、文春文庫。極論すると、どんでん返しのためには、人間はただの駒になる。つまり、人物描写が薄くなるか、ずいぶん矛盾をはらんだ性格になる。だからあまり惹かれないのだということに気づいた(まあ、フィリップ・マーゴリンのあ…
フリゾン=ロッシュ、みすず書房。ラスト近くのヴェルト峰頂上からの風景がこの上なくすばらしい。 日没はかぎりなく先延ばしにされている。平野ではすでに夜だが、ここ、四〇〇〇メートル以上のこの山頂では、彼らが影を抑えこんでいるのであり、消えつつあ…
パオロ・コニェッティ、新潮社。ピエトロとブルーノは結局、お互いしかわかり合える相手がいなかったのだろう。山小屋を建てる場面、最後にワインを酌み交わす場面が美しくも切ない。
ディーバ・アーナバーラ、早川書房。インドの風物が目新しく愉しい。結末はまあ、予想どおりだったか。
ドン・ウィンズロウ、ハーパー・コリンズ。考えてみれば、警官たちが殺人集団になるとか、大いに現実離れしているのだが、それでも引きこまれるのがさすが。
ハンナ・ティンティ、文藝春秋。すばらしい。個人的には『ザリガニの鳴くところ』よりはるかに好み。ホーリーとリリーが出会う場面は最高だし、最後の余韻も味わい深い。次のような箇所も印象に残る。 鏡を見ているようだった。ルーの内にあるのと同じ望みが…
アレックス・パヴェージ、早川書房。そもそも犯人、被害者、容疑者、探偵の組み合わせで無限に物語は作れるが、そのなかから説得力のあるものを構成するのが作家の腕の見せどころということか。その点、クリスティーは見事であったと。ともあれ、こういう作…
ローレン・ウィルキンソン、早川書房。「女ってだけじゃありません。黒人の女です。わたしはすでにツーストライク取られてるんです」と言うFBI捜査官。CIAから声をかけられてブルキナファソの大統領にスパイ活動をすることになる。いまひとつ乗れなかったが…
アダム・オファロン・プライス、早川書房。これはすばらしい。裏表紙には「ゴシック・ミステリ」とあるが、ちょっとちがうと思う。キャッツキル山地に立つ豪華ホテルにかかわった一族をめぐる短篇小説集といった味わいか。とくに、オーナーのレンの妻で、父…
アンジー・キム、早川書房。高気圧酸素供給による治療、韓国系移民、障害のある子を持つ家庭、不妊治療などをからめた法廷ミステリーだが、なぜかあまり好みではなかった。個人的に、多視点の小説に食傷気味なのかも。
ヨルン・リーエル・ホルスト、小学館文庫。大きな事件が起きるわけではなく、警部ヴィスティングと、ジャーナリストの娘リーネと、国家犯罪捜査局(クリポス)の捜査官スティレルが3方から容疑者を追うだけの話なのだが、静かな緊張感がすばらしい。
M・W・クレイヴン、早川書房。ストーンサークルで焼き殺すという残忍な犯行の動機は昔ながらのあれだが、話の展開はうまいし、ラストのまとめ方も秀逸。シリーズ次作が出たら読もうかなと思います。