2018-01-01から1年間の記事一覧

花殺し月の殺人

デイヴィッド・グラン、早川書房。石油が出て急に大金持ちになったオクラホマの先住民たち。そこに後見人制度を利用した白人たちが群がり、金をむしり取るだけではすまず……。いちおうの犯人が示されたあとで、無数の犯人が示唆される。ノンフィクションなが…

さらば、シェへラザード

ドナルド・E・ウェストレイク、国書刊行会。たしかに愉しい本だけど、それほど傑作には思えないのだが。ライターズブロックに陥ったポルノ作家が延々と25ページ分の1章を書きつづけるという。自分ネタをいろいろ盛りこんでいるところがミソか。

奇跡

いままでに見た是枝監督作のなかで、いちばんぐっと来た。とりわけ、待ち望んだ瞬間に何も言わなかったお兄ちゃんに。哀愁すら感じさせる子供たちの演技。ラスト、今日は桜島の灰が積もらないとお兄ちゃんに言わせて、鹿児島で生きていく決意をさり気なく示…

IQ

ジョー・イデ、ハヤカワ・ミステリ文庫。「サミッチどこだ、ビッチ」ラップが軽快。巨大な犬を使うアイデアも斬新。あえて難を言えば、ふたつの時間軸をV字型に収束させようとしたことで、アイザイアの探偵としての活躍ぶりが最後に集中してしまった。つま…

海よりもまだ深く

是枝裕和監督。クライマックスは台風だが、たいしたクライマックスでもないような……。ダメ男とまわりの人々の日常を切り取った短篇小説のような作品。

奪われた家/天国の扉

コルタサル、光文社古典新訳文庫。ウサギを吐き出す人の話(「パリへ発った婦人宛ての手紙」)に驚愕。世の中にはいろいろな作家がいるものだ。

ありふれた魔法

盛田隆二、光文社文庫。こういうリアリティに重きを置く小説は、ちょっとまちがうと一気に興が冷めると思うのだが、はずさないところが見事。まさかこういうエンディングになるとは思わなかった(もっと絶望のどん底に落とされるのかと……)。浮気がばれたあ…

アクロイド殺し

アガサ・クリスティ、早川文庫。クリスティ十八番の冷たい観察眼などは楽しいものの、犯人の意外さを除けば、それほど偉大な作品だろうかという気が。偶然の出来事が重なりすぎている感じもするし。

コールド・コールド・グラウンド

アイルランドの警察もの。同性愛はアイルランドでごく最近まで違法だった由。中絶はいまも? 風物(といっても騒乱)は興味深く、会話も愉しいが、解決を最後に集めすぎではなかろうか。あと、犠牲者に体液が残っていて、それゆえに○○であることがわかったと…

ダ・フォース

ドン・ウィンズロウ、ハーパーコリンズ。いろいろ言いたいことはあったのだが(やはり長いとか、堕ちていくのがつらすぎるとか、東江さんならどう訳すかと考えてしまうとか)、最後の章ですべて吹っ飛ばされた。すさまじい熱量。『倒錯の舞踏』、『ダメージ…

海街diary/そして父になる

海街のほうは、これだけ美しい4姉妹がひとところに住んでいるというその点だけが、リアルさに欠ける。あとは映像の雰囲気もたいへんいい。そして父もよくできていると思うけれど、主人公の父親だけがちょっとステレオタイプか。いずれにせよ、2作とも、基礎…

緑のマント/39階段

ジョン・バカン、創元推理文庫。『緑のマント』は、スパイ小説というより冒険小説。そもそもどういうミッションなのかつかみにくいし、移動中の地名が多くて困るが、人物造形はくっきりしていて、中心人物4人の強みがそれぞれ発揮されるところが愉しい。要す…

ゲーム・オブ・スローンズ 第五章

いつ誰が死ぬかわからないのが、このドラマの最大の特徴だと思いますが、ああこれはないよなという感じのシリーズ結末。

ゲーム・オブ・スローンズ 第四章

ティリオンの裁判のあたりからがぜんおもしろくなった。

ゲーム・オブ・スローンズ 第三章

どうなるスターク家という感じ。

アルテミス

アンディ・ウィアー、早川書房。これはよくできている。今年のベストワンにしてもいい。『火星の人』と同じく、主人公が超前向きなのがいい。訳もほかとは「ちがう」感じ。

乗客ナンバー23の消失

セバスチャン・フィツェック、文藝春秋。いやこれは先が読めませんよ、まちがいなく。ですが、ツイストのためのツイストは個人的にはもう関心外。これだけの規模の豪華客船なのに、ドイツ人ばかり出てくるのもどうかと思う。ヘニング・マンケルだったらもっ…

そしてミランダを殺す

ピーター・スワンソン、創元推理文庫。今年は読書のはずれが少ない。これも予想外の展開が売りで、悪くない。語り手がXXするのはルール違反という意見はありそうだけど。

地下鉄道

コルソン・ホワイトヘッド、早川書房。現実には存在しなかった、南部の奴隷を逃がすための地下鉄道。しかし、そのための人的ネットワーク、つまり比喩としての「地下鉄道」はたしかに存在したのだろう。記憶にとどめておきたい(と思うまでもなく、とどまる…

オンブレ

エルモア・レナード、新潮文庫。ちょっとこれまで読んだことのないタイプの物語。だから先がまったく読めない。レナードはそれほど好きではないのだが、こういう西部小説が原点だというのは勉強になった。映画版にはマクラレン嬢が出てこないから物足りない…

許されざる者

クリント・イーストウッド、ジーン・ハックマン、モーガン・フリーマン。イーストウッドの映画はどうしてこう、いつも安心して見ていられるのだろう。構図? サウンド? あるいはもっと感情的なもの? ご本人が役柄としてかならず負けるわけではないことも再…

ハティの最期の舞台

ミンディ・メヒア、早川書房。なかなかよくできた話。訳し分けがうまいんでしょうね。犯人は、まあ想像の範囲内だが(顔をつぶされているという場合、ふつうのミステリ読みは入れ替わりのアイデアに走りがちですが)、そもそも登場人物があまり多くないから…

ニーベルングの指環

バレンシア州立歌劇場、ズビン・メータ。しょっぱなのラインの娘三人から演出がすごすぎて、ちょっと音楽どころではありません。が、さすがメータ、くどすぎず、淡泊すぎず、うまくまとめている。奇抜な演出の効果がよく出ていたのは『ラインの黄金』の最後…