緑のマント/39階段

ジョン・バカン創元推理文庫。『緑のマント』は、スパイ小説というより冒険小説。そもそもどういうミッションなのかつかみにくいし、移動中の地名が多くて困るが、人物造形はくっきりしていて、中心人物4人の強みがそれぞれ発揮されるところが愉しい。要するに、ドイツがトルコ進出をもくろみ、謎の夫人と一部のトルコ人がそれに協力しようとしたところを、ハネーたちがドイツの作戦地図をロシア軍に渡すことによって阻止し、結果イギリスの利益も守ったという理解でいいのだろうか(?)
『39階段』はその点シンプルでわかりやすい。謎の解明と敵との対決がきわめてストレート。これもスパイというより一匹狼ハネーの政府の遊軍的な活動ですかね。
どちらもあまりスパイ小説らしくないのは、味方の裏切り(二重スパイ)が出てこないからだろうか。ル・カレやグリーンから振り返って考えているからではあるけれど。