2017-01-01から1年間の記事一覧

弟の夫(1〜3巻)

田亀源五郎、双葉社。想像していたほど価値観を揺さぶられることはなかった。しかし万人向けに丁寧にわかりやすく描かれているのは確か。

コードネーム・ヴェリティ

エリザベス・ウェイン、創元推理文庫。第二次世界大戦中、イギリス補助航空部隊の女性飛行士ふたりの友情と悲劇。斬新さは感じるものの、ふたりの口調が若すぎませんか。どちらもティーンエイジャーのような印象を受けるけれど、そんなに若いはずはない?

ドリアン・グレイの肖像

ワイルド、光文社古典新訳文庫。なるほどこんな話でしたか。幸せな王子にしろ、こちらにしろ、ゲイの雰囲気は濃厚だけれど、モーリスのほうがまだ生々しいように思う。印象的な場面や台詞には事欠かない。たとえば、ドリアン・グレイが一度は愛したシビルに…

パーソン・オブ・インタレスト シーズン3

いやはや、こんな展開になるとは。最初から考えていたとしたらすごい。

ギリシア人男性、ギリシア人女性を求む

フリードリヒ・デュレンマット、白水ブックス。今回も愉しい1冊。作者自身が書きたかった結末と、ふつうの娯楽小説を期待していた読者向けの結末が用意されているが、だんぜん前者のほうがすぐれている(筒井康隆的に)。スラップスティックでは細部が重要…

聖の青春

大崎善生、講談社文庫。29歳で亡くなった天才棋士、村山聖のドキュメンタリー。これほど懸命に、純粋に生きた人間をまえにして、ことばはない。この大崎さんといい、先崎学さんといい、将棋界には文章がうまい人が多いのか。

流砂

ヘニング・マンケル、東京創元社。スウェーデンを代表するミステリー作家が、がんを宣告されてからの思索の断片のようなもの。かならずしも死を意識したからではなかろうが、考える時間の単位が、次に氷河期が訪れるまでといったふうに何十万年とか何百万年…

パーソン・オブ・インタレスト シーズン2

「マシン」がコミュニケーション可能な超万能AIであることが明らかになる第1エピソードから、うまい。その超頭脳が変調を来しているかもしれないというエピソード17。「スーツの男」を追うFBI、命を救われたあと何者かに操られていた元CIA女工作員、IT企業CE…

もうちがう。本当に残念。↓戦後の日本はすごかつたと、一時、世界中が褒めそやしたけれど、近頃は、不景気と地震と原発事故のせいで評判が落ちた。本当はそれほどひどいわけぢやないと思ひますよ。たとへば言論の自由が保證されてゐる点で、東アジアでは随一…

心臓を貫かれて

マイケル・ギルモア、文藝春秋。『グレート・ギャツビー』と並ぶ村上訳の金字塔。村上訳であることを初めて意識せずに最後まで読めた。これが彼のその後の創作に影響を与えたことは疑いない。

「いわば、私は総理大臣なのでありまして、私が総理大臣である中に於いて、その中に於いてですね、私が総理大臣であることは、事実、であると同時に、大切なことは、この、私が総理大臣であることであって、これは、まさに、私は間違いなく、総理大臣なんだ…

海辺のカフカ

村上春樹、新潮社。キャラクターの造型や個別のエピソードはやたらとおもしろいのだけれど、全体として見るとどうかなあというところ。

鳥の巣

シャーリー・ジャクスン、国書刊行会。単純な多重人格ものと思いきや、最初の博物館の描写でやられた。こういう作家、好きだなあ。人格が切り替わるところの叙述も工夫されている。

パーソン・オブ・インタレスト シーズン1

犯罪者でもなく、警察でもない、いわば自警団的活動。扱いがむずかしいと思うのだが、見事に料理してドラマ化している。エピソード3までで勝負は決まった。 凄腕のフィクサーの女をフィーチャーしたエピソード6でさらにジャンプ。そしてエピソード7で、少し…

フランス人はイギリス人を「長篇小説の国」と呼ぶ。長篇小説発祥の地であることに敬意を表してである。しかしイギリスには、長篇小説と同じくらゐに、書かれ、読まれ、重んじられ、発達してゐる文学形式があつて、それは伝記。『蝶々は誰からの手紙』丸谷才一

ウインドアイ

ブライアン・エヴンソン、新潮社。厭な話ばかりなのにやめられない。表題作、ダップルグリム、スレイデン・スーツ、タパデーラ、グロットー、アンスカン・ハウスなどはとくに秀逸。グロットーは、筒井康隆『熊の木本線』をさらに怖ろしくしたような話。