ドリアン・グレイの肖像

ワイルド、光文社古典新訳文庫。なるほどこんな話でしたか。幸せな王子にしろ、こちらにしろ、ゲイの雰囲気は濃厚だけれど、モーリスのほうがまだ生々しいように思う。印象的な場面や台詞には事欠かない。たとえば、ドリアン・グレイが一度は愛したシビルにひどいことを言って、夜の街をさまよったときの一場面。

真夜中に摘まれたさくらんぼには、月の冷たさがこもっていた。

そしてシビルに謝罪する手紙を書いているとき。

自分を非難することには贅沢な快感があった。自分を責めているとき、自分を責める権利は他の何者にもないと感じるものである。我々の罪を赦すのは司祭ではなく告解の行為そのものだ。

ヘンリー卿には、モーリスの先輩リズリーの姿が重なる。