小さな村で起きる殺人事件。時計のトリックと『ナイルに死す』を思わせる犯人像。ミス・マープル初登場。
8つの完璧な殺人
ピーター・スワンソン、東京創元社。たしかにおもしろいが、ほとんど登場と同時に犯人がわかってしまった。また、冒頭のネタバレ警告で、「私」がブログで取り上げた8つの作品以外にアクロイドが入っていることからも、その後の展開が読めてしまう。これをよしとすべきなのか。ここまで早く犯人と先の展開がわかったのは、リチャード・ノース・パタースンの『子供の眼』以来。
トゥルー・クライム・ストーリー
ジョセフ・ノックス、新潮社。リーダビリティはとても高く、犯人も意外で、メタフィクション的な作りもおもしろいのだが、いまいち乗れなかった。つくづく自分は麻薬常用者が好きではないのだと再認識した次第。というより、もしかすると『ポピーのためにできること』とちがって、明るいキャラが出てこないせいかもしれない。もったいない。
サン=フォリアン教会の首吊り男
ジョルジュ・シムノン、早川書房。シムノンは『黄色い犬』ぐらいしか読んだことがなかった。それもたぶん小学生のころだから、よさがわかるわけがありません。これはすばらしい。謎も魅力的だし、ラ・ボエーム的な若さの苦味もある。幕切れもよく、全体的にコンパクト。文句のつけようがない。