シンパサイザー

ヴィエト・タン・ウェン、早川書房。まず印象的だったのは、ほぼ冒頭のマンと私とボンの義兄弟がビヤガーデンで別れの酒を飲む場面。最後の「再教育」も怖い。思えば当然だが、ヴェトナム戦争がヴェトナム人に残した傷がどれほど深く、複雑で、痛ましいか。
アメリカに渡ったヴェトナム人たちの夢。

私のアメリカンドリームは、死ぬ前にもう一度、私が生まれた土地を見ること。タイニンにある家族の庭の柿の木から熟れた実を取って食べること。私のアメリカンドリームは家に戻り、祖父母の墓にお線香を捧げること。ついに平和になり、歓喜の叫び声が銃声を聞こえなくしたときに、私たちの美しい国を歩き回ること。私のアメリカンドリームは、町から村から農園へと歩き、戦争のことなど聞いたこともない少年少女たちが笑い、遊んでいる姿を見ること。