モーリス

E・M・フォースター、扶桑社。『インドへの道』に続くフォースター祭り。イギリスでウルフェンデン勧告が法律になり、同性愛が合法化されたのは1967年だというが、そのあとにこの話が書かれていたらどうなっていたかと考えずにはいられない。いわゆる性描写はいっさいなし、せいぜい手にキスをする程度。しかしモーリスとアレクはたしかに結ばれ、いまも緑林をさまよっている。はたしてそれは「ハッピー・エンド」なのか。小説内ではイギリス貴族社会代表のバリー医師、ボレニアス牧師の存在感が大きく、まさにloomingという感じ。フォースターは自分の時代をどういう思いで生きていたのか。