震える山

このところ、翻訳ミステリの世界で非常に評価が高いジョン・ハート。『川は静かに流れ』を読んでもなぜか乗れず、理由がわからなくて困っていたのだが、『ラスト・チャイルド』を読んでようやく腑に落ちた。この人の作品、感情移入できる人物がひとりも登場しないのだ。逆に言うと、私の作品評価は、登場人物に感情移入できるかどうかで決まるということなのだけれど。

その点、C・J・ボックスの猟区管理官ピケットには、最初から最後まですんなり感情移入してしまう。最後のメアリーベスとの仲直りの場面、「ジョーが思ったのは、彼女が最初はどれほど違って感じられ、やがてどれほど馴染み深く感じられたかということだった」など、いかにも定型なのだが、「よかったね」と言いたくなる。ぜひ翻訳刊行が続いてほしい。

あ、でも欲を言えば、最初にワイオミングの地図でものっていれば、場所がイメージしやすかったかな。