犬の力

ドン・ウィンズロウ、角川文庫。代表作と言われるニール・ケアリーのシリーズは、ワイズクラックがワイズすぎて、正直なところ好きではなかったが、この大作は文句なしにすばらしい。敵の子供を谷底に投げ落とすところに、麻薬王アダンよりむしろ作者ウィンズロウの覚悟を見た。バハの海岸の隠れ家にアートがしかけた攻撃の迫力に圧倒された。手負いの獣のように逃げ、睦み合うカランとノーラに感応した。

 わたしが刑務所を恐れると思うのか、アダン? 今のわたしが、どんな地平にいると思っているのか?