ひとりでは生きられないのも芸のうち

内田樹文藝春秋。白眉は「食の禁忌について」。なぜハンニバル・レクター博士が神格化されたのか。「それは、「人間を殺して食う人間」は「動物を殺して食う人間」に「罰」を下しているということである。キリストがその愛によって人間たちの罪を贖ったのとは別の仕方で、レクター博士はその邪悪さによって人間たちの罪を贖っているのである」

結びの洞見に驚嘆する。「私たちが「人間が動物を殺す場面」から必死で目をそらそうとするのは、おそらくその経験が、「その罪を相殺したければ人間を殺して食わねばならぬ」という受け容れがたい結論に私たちを導くからである」