天使は黒い翼をもつ

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I・W・ハーパーの一パイント・ボトルから直に飲み、チェーサー代わりに口いっぱいに雪をほおばった。ウイスキーは火かき棒のように熱く、丸みを帯びて流れ落ち、胃のなかでかっと燃え、それからぬくもりとともに四肢を移動し、下腹のあたりにぬくもりの小さなシャワーを放った。

エリオット・チェイズ、扶桑社ミステリー。傑作。クライム・ノベルの定型(とくに『郵便配達は〜』)を踏んでいるが、随所の描写が秀逸。鬼気迫るラストもすばらしい。完璧にカットされたダイヤのような一作。しかし、この種の一人称でいつも思うのは、これだけ利口で観察眼にすぐれ、表現力もあったら、犯罪以外のことで大成しただろうにと……。