ゴールドフィンチ

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そして彼女は喜んで教えてくれた。それぞれの家具がもっともよい状態で光を受けているのをとらえるには、どこに、何時に立つべきかを。午後遅くに、日の光がぐるりと部屋をめぐるときーー」彼はパッ、パッ! と指を広げた。「それらの家具はひもの付いた爆竹のように、一つずつ燃えるように輝くんだ」

ドナ・タート、河出書房新社。「長さを感じさせない」と宣伝されつつ、やはり長いと感じる小説はいくらでもある(むしろそちらがふつうだ)が、これは本当にすぐ読めた。長いものほどじつは細部が重要で、この本ではたとえば、家具の修理の描写とか、美術に関する蘊蓄とか、細かいところがしっかりしているので安心感がある。

とはいえ、どうも麻薬をやる主人公には感情移入しづらいことがわかった(個人的に)。殺人鬼などはまったく平気なのに、不思議です。これはたとえば、ザ・ソプラノズのクリスなんかにしてもそう。また、ストーリーに殺人を絡ませる必要があったのか、結局それで主人公はどう変わったのか(あまり堪えていないというか、忘れてしまった?)、という疑問もなくはない。それらもあって、ボリスとアムステルダムに飛んでからあと(ボリスの友人たちがぞろぞろ出てきて、それぞれ何をしているのかわかりにくい)は消化不良気味。哲学的な雰囲気のエンディングはよかったけれども。