巨匠とマルガリータ

ブルガーコフ河出書房新社。舞踏会のホステス役を探してモスクワに現れた悪魔の一団。司会者の首が飛び、裸の女が街にあふれ出す黒魔術ショー。キリストの磔刑を物語る巨匠と、心清らかな恋人のマルガリータ。箒に乗って空を飛ぶ裸のマルガリータと、豚に乗って飛ぶ小間使いは、シャガールの絵画のよう。暖炉から登場する悪しき死者たちの大舞踏会。悪魔らが変貌しながら去っていくラストのイメージ喚起力。

奇想天外でありながら、細密画のように入念。ときにかぎりなく美しく、シニカルな笑いにも満ちている。読書体験としては、トニ・モリスン『ビラヴド』に匹敵する衝撃でした。