ドン・ジョヴァンニ@サントリーホール

ややオケ寄りの席で、声の聞こえがいまひとつだったけれど、これほどすばらしいとは。とくに女性陣の充実。美声かつ凛としたたたずまいのアンナ・ドンナ、平均値よりかなり妖艶なツェルリーナ。「バッティ、バッティ」のチェロは至福の音色。全体に躍動感あふれる演奏で、オケの結束も固く、ドン・ジョヴァンニ+ツェルリーナの場面にマゼットが現れたとき、音楽にふっと影が差すあたりに改めてモーツァルトの天才を思ったり。まことに屈託のないドン・ジョヴァンニに最初いくらか戸惑いはしたものの、終わってしまうのが惜しいほど愉しく豊かな時間でした。