ブレント・ゲルフィ、ランダムハウス講談社。これは傑作。人物造型が光る。マフィアの巨魁マクシムも印象的だが、なんといっても白髪の守護天使ヴァーリャ。たとえば、第3章。
「角を曲がると、そこにヴァーリャが、しなやかなわたしの天使がいる。・・彼女はあおむけのグロモフにのしかかり、ずんぐりしたウージーの銃身をやつの口に突っこんでいる。あいたほうの手には刃渡りの長いナイフ。・・なまぬるい空気の中で白い髪がふわりとふくらみ、大きなアクアマリンの瞳に安堵が広がる。つづいて喜びが。「生きてたんだ!」彼女はグロモフの口から銃を離したりはしない。」
そのヴァーリャとの別れ。
「大きな目に涙があふれている。その涙が硫酸のようにわたしの心を焼く。」